TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.18 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(3))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.18 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(3))が掲載されました。

No.18 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(3)

1. 利息等に関する規定

前回、前々回に引き続き、本年9月1日より施行されている「民間貸借案件審理の適用法律にかかる若干問題に関する最高人民法院の規定」(法釈[2015]18号)(以下「本解釈」)のポイントを解説します。今回は、本解釈のうち利息等に関する部分に注目します。本解釈第25条以下では、利息の約定が無い、又は不明確な場合の処理(第25条)、利息約定の有効・無効判断の基準となる具体的な利率(第26条)、元本該当性の判断基準(第27条)、利息の元本組み入れ(第28条)、遅延利率(第29条、第30条)及び利息の任意的な支払(第31条)等の事項を規定します(※1)。

2. 利息約定の有効・無効判断の基準となる具体的な利率

本解釈第26条第1項は、当事者の約定利率が年利24%を超えない場合においては、貸主から借主に対する約定利息支払請求を認めるものとします。他方、同条第2項は上記約定利率が年利36%を超える場合、当該超過部分の利息約定を無効とし、借主が貸主に対して、年利36%を超える部分の支払済み利息返還を求めた場合、これを認めるものとします。このように、本解釈が利息約定の有効・無効判断の基準として「年利24%」「年利36%」という具体的な数字を明らかにした点は、今後の実務において参考となります(※2)。
なお上記に関しては、約定利率が24%超、36%以下の範囲で設定された場合の処理が問題となります。この点、上述した各条項との関係に鑑みれば、この場合、[1]貸主が借主に対して年利24%を超える部分の約定利息支払いを求めたとしても人民法院はこれを認めない、[2]他方で、借主が年利24%を超える部分の利息を任意に支払っている場合においては、当該借主が事後的に不当利得を理由として、貸主に対して当該部分の支払い済み利息の返還請求を行ったとしても、人民法院はこれを認めない、という結論になるものと思われます。

3. 遅延利率

本解釈第29条第1項は、当事者間における遅延利率の約定を認める一方で、当該利率は年利24%を超えてはならないものとします。なお当事者間における遅延利率の約定がなく、又は約定が不明確な場合、人民法院は状況に応じて異なる処理をすることができます。具体的には、(i)貸付期間内における利率を約定しておらず、また、遅延利率も約定していない場合において、貸主が借主に対して、返済期限を過ぎた日から起算して、年利6%に基づき、資金の占用期間に対応する利息の支払を求めた場合、人民法院はこれを認めることとされています。また、(ii)貸付期間内における利率を約定する一方で、遅延利率は約定していない場合において、貸主が借主に対して、返済期限を過ぎた日から起算して、貸付期間内における利率に基づき、資金の占用期間に対応する利息の支払を求めた場合、人民法院はこれを認めることとされています。

【注】
※1 特に断らない限り、本稿中で引用する条文番号はいずれも本解釈のものです。
※2 最高人民法院が1991年8月13日に発布した「人民法院が貸借案件を審理することに関する若干の意見」(法(民)〈1991〉21号)(本解釈の施行と同時に廃止。)第6条では、当該意見所定の民間貸借の利率は銀行の利率よりも適切に高くてもよいとする一方で、銀行の同類貸金利率の4倍を超えてはならないとしていました。
(2015年9月14日 弁護士 小林幹雄