TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.8 外国投資法の制定作業について(3))が掲載されました。

その他更新情報

「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.8 外国投資法の制定作業について(3))が掲載されました。

No.8 外国投資法の制定作業について(3)

1. 国家安全審査制度に関する改正案の内容

パブコメ稿では、「国家安全審査」制度に関して専門の章を設けて(第4章/第48条から74条)、以下のような内容を規定しています(※1)。

① 国家安全の確保、外国投資の規範化及び促進のため、統一的な外国投資国家安全審査制度を構築し、国家安全に危害を与え又はその可能性のある如何なる外国投資に対しても審査を行なうこと(第48条)。

② 上記審査の担当部門(外国投資国家安全審査部際聨席会議)、安全審査の枠組み(申請による審査、職権による審査)、申請による審査の諸手続(申請書類、事前相談等)、安全審査の考慮要素、決定の種類(承認、条件付承認又は不承認)、審査期限(一般・特別の各審査段階の期限)、条件付承認の関連内容、ガイドラインの制定・公布、臨時・強制措置及び不服申し立て禁止(国家安全審査決定に対する行政復議・行政訴訟提起の禁止)等に関する内容(第49条から74条)。

このほか、パブコメ稿第10章「法律責任」中には、国家安全審査関連規定の違反行為(審査過程における虚偽資料提供・虚偽陳述や、審査決定中で附加された条件への違反等)に対する処罰(是正命令、罰金等)が規定されています(第146条)。

2. 現状との比較

現時点でも国家安全審査制度に関する規定は存在します。例えば外国投資家による国内企業の買収に関して国務院弁公庁「外国投資家による国内企業買収に係る安全審査制度の確立に関する通知」(2011年3月3日施行)及びその関連規定(※2)があり、当該通知によれば、外国投資家が中国国内の軍事工業及びその関連企業、重点的・敏感な軍事施設の周辺企業、国防安全関連のその他単位を買収する場合等 、一定の買収案件に関して安全審査手続が実施されることになります。但し、パブコメ稿が上記の通り規定するような、外国投資に関する統一的な国家安全審査制度はこれまで導入されていませんでした(商務部説明には、現行の制度が必ずしも十分なものではない、という認識が示されています。)。

3. 実務への影響

外国投資法が正式に成立し、上記の内容が維持された場合、これまでよりも国家安全審査制度の適用範囲が拡大することになります。外国投資案件を進めるに際しては当該制度の対象となる可能性を検証すること、及び対象となる場合には関連手続を適切に履行することが特に重要となります。

【注】
※1 引用する条文番号はいずれもパブコメ稿のものです。
※2 「外国投資家による国内企業買収に係る安全審査制度実施についての規定」(2011年9月1日施行)
(2015年3月5日 弁護士 小林幹雄