TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.30 新エネルギー自動車の関連政策について(8))が掲載されました。

その他更新情報

「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.30 新エネルギー自動車の関連政策について(8))が掲載されました。

No.30 新エネルギー自動車の関連政策について(8)

1. 最初に

前回に続き「純電動乗用車企業新規建設の管理規定」(以下「本規定」といいます。)の概要を紹介します。今回及び次回は、本規定第2章が規定する、新規投資プロジェクトに対する投資管理関連事項について触れます。なおここでいう新規投資プロジェクトとは、本規定に基づき中国国内で投資して独立法人たる純電動乗用車生産企業を新たに設立するプロジェクトを指すものとします(本文の以下の部分においても同様です。)。

2. 「自動車産業発展政策」等への適合

本規定第5条は、新規投資プロジェクトが「政府が審査確認する投資プロジェクト目録(2014年版)の発布に関する国務院の通知」(国発[2014]53号)(※1)及び「自動車産業発展政策」(以下「発展政策」といいます。)の関連規定を執行すべきものと定めています。
上記のうち、発展政策は、中国における自動車産業政策の基本方針を規定するものであり、完成車製造を始めとする自動車関連プロジェクトに対する現行規制の重要な根拠規定の一つです。当該政策は2004年5月21日に発布・施行され、全13章(「政策目標」「発展計画」「技術政策」「構造の調整」「参入管理」「商標ブランド」「製品開発」「部品及び関連産業」「販売ネットワーク」「投資管理」「輸入管理」「自動車消費」及び「その他」の各項目)、合計78条の条項と二つの附属書類にて構成されます。(※2)

3. 投資総額及び生産規模

上記の通り、本規定は新規投資プロジェクトが発展政策の規制に適合することを求めています。他方で本規定第6条によれば、新規投資プロジェクトの投資総額と生産規模については、発展政策所定の最低要求に関する制限を受けず、投資主体が自ら決定することとされます。発展政策第47条では、自動車生産企業を新たに建設する投資プロジェクトについて投資総額や生産規模の下限が規定されていますが(※3)、本規定に基づく新規投資プロジェクトはこれらの要求に従う必要がないことになります(※4)。
この点からは、本規定が純電動乗用車の生産に新規参入する企業に対して、投資総額や生産規模の面において一定の配慮を行っているものと理解することができます。他方で、本規定は、当該規定に基づき新規建設される純電動乗用車生産企業の投資主体が具備すべき基本的条件について、各種能力等の側面から高いレベルの要求を行なっています。この点については次回の本欄で検討します。

【注】
※1 国務院が2014年10月31日に発布・施行した通知であり、当該通知に添付される目録「政府が審査確認する投資プロジェクト目録(2014年版)」内の固定資産投資プロジェクトにつき企業が投資建設を行う場合、規定に基づき関連プロジェクト審査確認機関の審査確認を申請すること等を求めるものです。なお当該目録の「六、機械製造」の項目中、自動車業につき、上述の「自動車産業発展政策」に従って執行することが規定されています。
※2 なお、発展政策中の一部条項は2009年9月1日よりその執行が停止されています(「工業及び情報化部、国家発展改革委員会令第10号」に基づく。)。
※3 発展政策第43条所定の「審査確認を実行する投資プロジェクト」には自動車生産企業の新規建設が含まれます。そして当該政策第47条は「新たな投資プロジェクトは以下の条件を具備しなければならない」として各種プロジェクトの投資総額要件等を規定し、この中で自動車生産企業新規建設の投資プロジェクトについては、そのプロジェクト投資総額が人民幣20億元を下回ってはならないものとすると共に、このうち自己保有資金の額が人民幣8億元を下回ってはならないことを規定します。また、製品の研究開発機構を設立すべきこと、及びこれに対する投資額の最低条件等についても規定します(当該条項第5号)。更に当該条項はプロジェクトの生産規模についても規定しており、例えば乗用車の投資プロジェクトを新規に建設する場合「4気筒エンジンを搭載したものは50000台;6気筒エンジンを搭載したものは30000台」という生産規模を下回ってはならないものとします(当該条項第6号)。
※4 なお、本規定に基づき新規建設される純電動乗用車生産企業は、純電動乗用車を生産することのみが可能であり、内燃機関を駆動動力とする如何なる自動車製品も生産してはならないものとされています(本規定第6条第2項)。
(2016年6月29日 弁護士 小林幹雄