TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.21 大気汚染防止法の改正について(3))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.21 大気汚染防止法の改正について(3))が掲載されました。

No.21 大気汚染防止法の改正について(3)

1. 各種汚染源に着目した大気汚染防止の措置

今回は改正法の注目点の一つである、各種汚染源に着目した大気汚染防止の措置について紹介します。改正法は第4章「大気汚染防止措置」中に第1節「石炭燃焼及びその他エネルギーの汚染防止」、第2節「工業汚染防止」、第3節「機動車船等による汚染防止」、第4節「ほこりによる汚染の防止」及び第5節「農業及びその他の汚染防止」というように、各種汚染源に対応する項目を設けています。現行法にも石炭燃焼や機動車・船による大気汚染等に着目した規定はありますが(※1)、改正法がこれらの点の詳細化を進めている点にはやはり注目すべきです。以下、これらの内容のうち特に留意すべき内容を見て行きます。

2. 汚染源ごとの汚染防止措置の内容

改正法第4章「大気汚染防止措置」の中で、第1節「石炭燃焼及びその他エネルギーの汚染防止」の項目では、国務院の関連部門と地方各級人民政府がエネルギー構成の調整やクリーンエネルギーの生産・使用促進を行うこと等が規定されています。また、石油精製企業に対しては、燃料油品質標準に従って燃料油の生産を行うことを義務付けています(改正法第32条、第37条)。次に第2節「工業汚染防止」の項目では、鋼鉄、建材、非鉄金属、石油、化学工業等の企業に対して、生産過程で粉塵、硫化物質等が排出される場合のクリーン生産プロセス採用等を義務付けています(改正法第43条)。このほか第4節「ほこりによる汚染の防止」では施工単位等に対する、ほこりによる大気汚染を防ぐための各種の要求等が規定され、また第5節「農業及びその他の汚染防止」では農業生産経営者に対する、肥料や農薬の使用方法の各種要求等が規定されています。現地に進出する企業としては、自社の属する業界に関係する汚染防止措置が存在しないか、改めて確認することが必要です。なお第3節「機動車船等による汚染防止」については次の項で検討します。

3. 機動車船等による汚染防止

改正法第4章第3節「機動車船等による汚染防止」は、自動車や船舶等による大気汚染防止措置に関する内容を規定しています。このうち、近時、その排気ガスによる大気汚染への影響が懸念されている自動車に関しては、アイドリングストップの奨励制度(改正法第57条)や、環境保護の観点からのリコール制度(同第58条)が定められています。前者は、環境に配慮した運転を国家が推奨し、ガソリン車のドライバーが、道路交通に影響せずかつ3分間以上停車する必要がある場合にはエンジンを停止し、大気汚染物質の排出を減少させることを奨励するものです。後者は、自動車等の生産、輸入企業について、自動車等の大気汚染物質排出が標準を超過し、設計、生産上の欠陥に属し又は所定の環境保護耐久性要求に適合しないことを知った場合にはリコールを実施することを義務付け、実施しない場合には国務院品質監督部門が国務院環境保護主管部門と共に当該リコールを命じるというものです。なお、改正法の制定過程においては、省、自治区、直轄市の人民政府が、その行政区域の大気汚染防止の必要性及び機動車の排出による汚染状況に基づき、機動車の通行に対する一定の制限を規定できるという内容の条項を設置することも検討されていましたが(※2)、最終的に改正法には含まれませんでした。

【注】
※1 現行法は「石炭燃焼により発生する大気汚染の防止」、「機動車船の排出による汚染の防止」及び「排気、ほこり及び悪臭汚染の防止」(第3章から第5章)という内容で各種汚染源に着目した規定を設けています。
※2 今回の改正手続において、その修正草案(第2次審議稿。2015年7月)の段階では、第58条で当該内容を規定していました。
(2015年11月13日 弁護士 小林幹雄