「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.11 外国投資法の制定作業について(6))が掲載されました。
No.11 外国投資法の制定作業について(6)
④ 定期報告
外国投資家の中国国内投資が外国投資企業の設立又は変更に関係する場合、外国投資企業は毎年4月30日より前に前年度の情報報告を行なう必要があります(※6)。具体的には、外国投資家の基本情報(名称や住所等)、外国投資の基本情報(投資金額や投資の出所等)、外国投資企業の基本情報(名称や住所等)のほか、前年度における外国投資企業の経営状況情報、財務会計情報、外国投資家等との間の投資・輸出入貿易の状況、重大な訴訟等の事項を報告することになります。なお外国投資家が支配する外国投資企業であって、その資産総額、販売額又は営業収入が人民幣100億元を超える場合、又はその子会社の数が10社を超える場合、各四半期の終了後30日以内に当該四半期の経営状況情報及び財務会計情報を報告することになります(以上につき92条、94条)。
2. 現状との比較
「商務部説明」によれば、上述した情報報告制度は、外国投資の状況と外国投資企業の運営状況を適時、正確かつ全面的に把握するために設けられるものです。なお現行制度下でも、近時では外商投資企業も対象に含めて工商行政管理部門に対する年度報告等及びその公示制度が実施されていること(※7)に鑑みれば、既存の企業にとって、パブコメ稿所定の各種報告制度は比較的馴染みやすいものといえるかもしれません。
3. 実務への影響
パブコメ稿所定の各種報告制度は、近時における「事前監督から事後的監督へ」という当局姿勢の変化に沿うものであり、現状、様々な事項について審査認可部門の認可を要求されている既存の外商投資企業にとっては、規制緩和という側面も有しています。他方で、当該報告制度の報告先当局は外国投資主管部門であって、現行の年度報告等及びその公示制度における報告先当局(工商行政管理部門)とは異なること、また、報告対象事項も比較的広いことに鑑みれば、実際の運用において、外国投資家及び外国投資企業として、負担が相当程度重くなる可能性もあることに注意が必要です。