TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.13 外国投資法の制定作業について(8))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.13 外国投資法の制定作業について(8))が掲載されました。

No.13 外国投資法の制定作業について(8)

前回まで「外国投資法の制定作業について」と題して合計7回にわたりパブコメ稿の要点について述べてきました。本テーマの最終回である今回は、以下の通り、「外国投資法」の発効以前より存続する外国投資企業(以下「既存の外国投資企業」)(※1)に関する処理について整理します。

パブコメ稿第11章「附則」には、その他の事項とあわせて、既存の外国投資企業に関する以下のような内容が規定されています(※2)。

①既存の外国投資企業には、同章に特別の規定がない限り「外国投資法」が適用されること(153条)(※3)

②既存の外国投資企業が「外国投資法」発効後に経営事項を変更して、同法によれば参入許可申請が必要となる場合、当該許可を申請すべきこと。同様に既存の外国投資企業が「外国投資法」発効後に投資金額を増額して、実施制限目録(※4)所定の基準に到達する場合、参入許可を申請すべきこと(154条)

③既存の外国投資企業は当初認可を経た経営範囲、期限及びその他の条件の下、継続して経営できること(155条)

④既存の外国投資企業は「外国投資法」発効後3年以内(※5)に「会社法」「組合企業法」及び「個人独資企業法」等の法律法規に基づき、企業の組織形式及び組織機構を変更しなければならないこと(157条)

上記のうち④の内容は特に重要です。現状、外国企業の現地法人が採用する組織機構の構成は、多くの場合、会社法の要求と完全には一致していないためです。例えば有限責任会社形態を採用する中外合弁経営企業や中外合作経営企業においては、董事会(後者においては董事会又は聨合管理機構)を最高意思決定機関とすることが一般的ですが、会社法の要求に従えば董事会ではなく「株主会」または「単独株主」が最高意思決定を行うことになります(会社法36条、61条)。また、外資(独資)企業の場合も2006年1月1日より前に設立された企業においては、同様の不一致が存在することが多いです(※6)。
外国投資法が正式に成立し、パブコメ稿中の上述した内容が維持された場合、上記のような不一致を会社法に適合させるために定款や合弁契約の関連条項を修正して、組織機構等の変更を行なわなければならないこと(※7)に注意が必要です。

【注】
※1 なお「『外国投資法』の発効以前より存続する外国投資企業」の主なものとしては中外合弁経営企業、中外合作経営企業及び外資(独資)企業が想定されます。現時点では、これらを「外商投資企業」と総称することが多いものといえます。
※2 引用する条文番号は、特に断らない限りいずれもパブコメ稿のものです。
※3 前述の通り、現行の特別法である「中外合資経営企業法」「中外合作経営企業法」及び「外資企業法」は、「外国投資法」の施行と同時に廃止される見込みです(170条)。
※4 「実施制限目録」については、本欄No.7「外国投資法の制定作業について(2)」中の該当部分をご参照下さい。
※5 なお当該企業が経営期限を設定しており、当該期限が「外国投資法」発効後3年以内に満了する場合でかつ経営期限を延長する意向がある場合、当初の経営期限内に変更を行う必要があります。
※6 有限責任会社形態を採用する中外合弁経営企業や中外合作経営企業において董事会等を最高意思決定機関とすることが一般的なのは、中外合資経営企業法6条2項、中外合作経営企業法12条1項が董事会に(後者の場合、董事会又は聨合管理機構に)最高意思決定機関としての役割を認めているためです。他方、外資(独資)企業の根拠規定である外資企業法には同様の規定はありません。但し、実務上は2005年改正会社法の施行前に設立された外資(独資)企業はやはり董事会を最高意思決定機関としていることが多く、また、当該改正会社法の施行(2006年1月1日)後も従前の組織機構を維持している例が比較的多いものといえます(これに対して、2006年1月1日以後に設立された外資(独資)企業では、株主会又は単独株主が最高意思決定を行うものとすることが一般的です。)。
※7 「3年間」という期限が設定されていること、また、中外合弁経営企業等においては合弁パートナーとの協議が必要になること等に鑑みれば、外国投資家によっては当該修正作業が大きな負担となることも予想されます。

(2015年5月11日 弁護士 小林幹雄