TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.22 大気汚染防止法の改正について(4))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.22 大気汚染防止法の改正について(4))が掲載されました。

No.22 大気汚染防止法の改正について(4)

今回は、改正法の内容のうち、地方政府の責任強化、重点地域における協力措置、及び重度汚染の天気への対応等の事項について検討します。

1. 地方政府の責任強化

地方の各級人民政府は、当該行政区域の大気環境の質に対して責任を負い、大気汚染物質排出量をコントロール、又は段階的に削減して大気環境の質を所定の標準に到達させ、かつ段階的に改善する必要があります(第3条第2項)(※1)。この点、改正法は、各地域における大気環境改善の実効性を高めるべく、地方政府の責任を強化しています。
例えば、①省、自治区及び直轄市における大気環境の質の改善目標、大気汚染防止重点任務の完成状況を国務院環境保護主管部門等が審査すること、また、これらの地方の人民政府も審査に関する規定を制定して、当該行政区域内の地方において同様の審査を行うこと、審査結果は社会に公表すること(第4条第1項)、②大気環境の質に関する国家の標準に到達しない都市の人民政府は、期限を定めた標準到達計画を速やかに制定して対処し、国務院等の規定する期限に従い当該標準に到達すべきこと、当該計画は社会に公表し、直轄市等においては当該計画を国務院環境保護主管部門に届け出ること(第14条第1項、第15条)、③都市の人民政府は、毎年、当該レベルの人民代表大会等に対して環境状況等を報告する際、期限を定めた大気環境の質の標準到達計画の執行状況を報告し、かつ社会に公表すること(第16条)等の内容が規定されます。

2. 重点地域における協力措置

改正法は「重点区域大気汚染聨合防止」の章を設けて(第5章、第86条から第92条)、国家大気汚染防止重点区域(以下「重点区域」)に指定された地域における大気汚染防止の協力措置等について規定します。主な内容として、①重点区域は国務院環境保護主管部門が画定して国務院の認可を得ること、②重点区域内の関連する省、自治区、直轄市の人民政府は定期的な会議を行い、統一的な計画、標準、監視測定、防止措置の要求に基づき協力して大気汚染の防止を行うべきこと(以上につき、第86条)、③国務院環境保護主管部門等は重点区域の大気汚染聨合防止行動計画を制定して、当該地域の大気環境の質の改善を促進すること(第87条)等の内容が規定されています。地域間における大気汚染防止領域における協力措置の例はこれまでにも存在しますが(北京市、天津市、河北省及びその周辺地域を対象としたもの等)、今後も、同様の措置が強化されることが予想されます。重点区域として指定された地域に進出する企業は、当該区域において独自に実施される大気汚染規制措置の有無・内容につき留意することが重要です。

3. 重度汚染の天気への対応

改正法は「重度汚染天気対応」の章を設けて(第6章、第93条から第97条)、重度の大気汚染状態となった場合の各種対応措置について規定します。その主な内容としては、①国務院環境保護主管部門等が重点区域における重度汚染の天気に対する監視測定予報等システムを構築し、予報等の標準を統一すること、②区域における重度汚染天気が発生する可能性がある場合、重点区域内の関連する省、自治区、直轄市の人民政府に速やかに通報すること(以上につき、第93条)、③省、自治区、直轄市、及び区を設置する市の人民政府等は、重度汚染天気の応急プランを制定し、上級人民政府環境保護主管部門に届け出て、かつ、社会に公表すること(第94条)等です。北京市の「空気重度汚染応急プラン」(2013年10月に試行開始し、本年3月16日からは新たな内容で実施しているもの。)のように、同種の制度は既に実施されています。今後、このような応急プランが各地で制定、実施されることも予想され、当該プランに基づき、大気汚染の状況悪化時には、交通制限や工場の生産一時停止・生産制限等の各種要請、命令がなされることがありえます(第96条)。当該地域に進出する企業の活動に影響が生じる可能性もありますので、注意が必要な動向です。

【注】
※1 特に断らない限り、本稿中で引用する条文番号はいずれも改正法のものです。
(2015年11月26日 弁護士 小林幹雄