TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.9 外国投資法の制定作業について(4))が掲載されました。

その他更新情報

「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.9 外国投資法の制定作業について(4))が掲載されました。

No.9 外国投資法の制定作業について(4)

1. 「外国投資家」及び「外国投資」の概念に関する改正案の内容

パブコメ稿では「外国投資家」及び「外国投資」に関して、以下のような定義規定を設けています(※1)。

① 「外国投資家」とは:中国国内において投資を行う、以下の主体。
ⅰ)中国国籍を有しない自然人
ⅱ)その他の国家又は地区の法律に基づき設立された企業
ⅲ)その他の国家又は地区の政府及びその所属部門、機関
ⅳ)国際組織
なお、上記の主体が支配(※2)する中国国内企業は、外国投資家と同視されます(第11条)。

② 「外国投資」とは:外国投資家が直接又は間接的に従事する以下のような投資活動。
ⅰ)中国国内企業の設立
ⅱ)中国国内企業の株式、持分、財産持分、議決権又はその他類似する権益の取得
ⅲ)前項でいう権益を自らが保有する中国国内企業に対する、期間1年以上の融資の提供
ⅳ)中国国内又はその他の中国資源管轄領域に属する自然資源調査、開発ライセンスの取得、又は基礎インフラ建設、運営ライセンスの取得
ⅴ)中国国内の土地使用権、建物所有権等、不動産権利の取得
ⅵ)契約、信託等の方式を通じて中国国内企業を支配し、又は中国国内企業の権益を保有すること

なお、中国国外取引により中国国内企業の実質的支配権を外国投資家に移転する場合、外国投資家が中国国内において投資することと同視されます(第15条)。

2. 現状との比較

商務部説明によれば、「外国投資家」該当性の判断において実質的支配の有無という要素を加味したこと、及び「外国投資」の内容を必ずしも新規法人設立等のグリーンフィールド・インベストメント(中文:「緑地投資」)に限定していないことがパブコメ稿の特徴です。その結果として、現行制度と比較して「外国投資家」「外国投資」の各概念が広いものとなっています。

3. 実務への影響

外国投資法が正式に成立し、上記の内容が維持された場合、これまでよりも、外国投資案件として扱われる事例(その結果、外国投資規制に服する事例)が増えるものと思われます。また、これまで一部において利用されていたVIEスキーム(VIEとは“Variable Interest Entities”の略。外資が規制される業種領域において、契約等を通じて国内資本企業をコントロールすること等を内容とするスキーム。中国語で「協議控制」ともいいます。)に対する今後の影響の有無という点にも注目すべきです(※3)。

【注】
※1 引用する条文番号はいずれもパブコメ稿のものです。
※2 パブコメ稿は、「支配」(中文:「控制」)の概念についても、定義規定を設けています(第18条)。
※3 パブコメ稿第158条は「協議控制の処理」と題するものの、この点に関する実質的な規定を現時点では行なっていません。商務部説明によれば、この点に関しては各方面の意見を踏まえて、今後更なる検討が進められる予定であるようです。
(2015年3月6日 弁護士 小林幹雄