TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(租税)タックスヘイブンに設立された法人が受領する配当金に対する課税処分に関する事件[大法院2018.12.13.宣告])

その他更新情報

外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(租税)タックスヘイブンに設立された法人が受領する配当金に対する課税処分に関する事件[大法院2018.12.13.宣告])

【判示事項】

[1] 国税基本法第14条第1項で定める実質課税原則の意味 / 実質課税の原則が、居住者や内国法人がわが国の租税を 回避するためにタックスヘイブンに外形のみの「基地会社(Base Company)」を設立し法人形式のみを利用する国際取引に適用されうるのか否か(積極)
[2] 法人の出資者が社外流出した法人の所得を確定的に自己に帰属させた場合、出資者に対する配当所得に該当するものとして追認することができるか否か(原則的積極)
[3] 国税賦課の除斥期間が過ぎた後になされた賦課処分の効力(無効)
[4] 旧国税基本法第26条の2第1項第1号で定める「詐欺その他不正の行為」の意味及び納税者が名義を偽装して所得を得た場合、名義偽装 事実のみで上記「詐欺その他不正の行為」に該当するのか否か(原則的消極)
[5] 「甲が香港に設立した法人の資金を英国領ヴァージン諸島に設立した法人に送金し、又は借名株主が配当所得を代わりに受領するなどの方法により所得税を逋脱した」ことを理由に管轄税務署長が甲に総合所得税賦課処分をした事案において、甲が1999年・2000年に「大韓民国と米合衆国との間の所得に関する租税の二重課税回避と脱税防止及び国際貿易と投資の増進のための協約」第3条第2項に基づき米国の居住者とみなされるため、香港法人から借名株主名義で1999年・2000年に支払を受けた配当金は国外源泉所得に該当し課税することができないとした原審判断を正当であると認めた事例
[6] 一つの納税告知書に本税と加算税を一緒に賦課するとき及びいくつかの種類の加算税をともに賦課する場合、納税告知書の記載方法 / 本税と加算税それぞれの税額と算出根拠及び加算税相互間の種類別税額と算出根拠等を区分して記載せず本税と加算税の合計額等のみを記載した場合、課税処分が違法であるか否か(積極)

【判決要旨】

[1] 国税基本法第14条第1項は実質課税原則を定めているが、所得や収益、財産、取引など課税対象に関してその帰属名義と異なり実質的に帰属される者が別途いる場合には、形式や外観により帰属名義者を納税義務者とみなさず実質的に帰属される者を納税義務者とみなすという内容である。したがって、財産の帰属名義者はこれを支配・管理する能力がなく、名義者に対する支配権等により実質的にこれを支配・管理する者が別途いて、そのような名義と実質の乖離が租税回避目的から生じた場合には、その財産に関する所得は財産を実質的に支配・管理する者に帰属されるものとしてその者を納税義務者とみなさなければならない。実質課税原則は、非居住者や外国法人が源泉地国であるわが国の租税を回避するために租税条約上の恩恵を受ける国に名目会社を設立し法人形式のみを利用する国際取引のみならず、居住者や内国法人が居住地国であるわが国の租税を回避するために所得税を非課税とし、又は低い税率で課税するタックスヘイブンに事業活動を遂行する能力がない外形のみの、いわゆる「基地会社(Base Company)」を設立し法人形式のみを利用することにより実質的な支配・管理者に帰属されるべき所得を不当に留保しておく国際取引にも同様に適用される。
[2] 法人の出資者が社外流出した法人の所得を確定的に自己に帰属させた場合、特別な事情がない限り、このような所得は、株主総会決議の有無、配当可能利益の存否、出資比率に従い支払われたのか否かなどに関係なく出資者に対する配当所得に該当するものとして追認することができる。
[3] 旧国税基本法(2010年1月1日法律第9911号による改正前のもの)第26条の2第1項は国税賦課の除斥期間を定めている。すなわち、国税はこれを課することのできる日から5年が過ぎた後は課することができず(第3号)、ただし、納税者が詐欺その他不正の行為により国税を逋脱し、又は還付・控除を受ける場合には10年(第1号)、納税者が法定申告期限内に課税標準申告書を提出しなかった場合には7年(第2号)が過ぎた後は課することができない。このような国税賦課の除斥期間が過ぎた後になされた賦課処分は無効である。
[4] 旧国税基本法(2010年1月1日法律第9911号による改正前のもの、以下同じ)第26条の2第1項第1号で定める「詐欺その他不正の行為」とは、租税の賦課と徴収を不可能にし、又は著しく混乱させる偽計その他不正の積極的な行為をいい、他の行為を伴うことなく単純に税法上の申告をせず、又は虚偽申告をするにとどまるものはこれに該当しない。また、納税者が名義を偽装して所得を得るとしても、名義偽装が租税逋脱目的から生じ、さらに、これに虚偽契約書作成と代金の虚偽支払、課税官庁に対する虚偽租税申告、虚偽の登記・登録、虚偽の会計帳簿作成・備置きといった積極的な行為まで加わるなど特別な事情がない限り、名義偽装事実のみで旧国税基本法第26条の2第1項第1号で定める「詐欺その他不正の行為」に該当するとはいえない。
[5] 「甲が香港に設立した法人の資金を英国領ヴァージン諸島に設立した法人に送金し、又は借名株主が配当所得を代わりに受領するなどの方法により所得税を逋脱した」ことを理由に管轄税務署長が甲に総合所得税賦課処分をした事案において、「大韓民国と米合衆国との間の所得に関する租税の二重課税回避と脱税防止及び国際貿易と投資の増進のための協約」(以下「韓米租税協約」という)第3条第2項(a)号は「第1項の規定による事由によりある個人が両締約国の居住者である場合には、その者が住居を置いているその締約国の居住者とみなされる。」と定め、同項(b)号は「同個人が両締約国内に住居を置いており、又はいずれの締約国にも住居を置いていない場合に、その者は、その人的及び経済的関係が最も密接なその締約国(重大な利害関係の中心地)の居住者とみなされる。」と定め、同項(e)号は「本項の目的上の住居は、ある個人がその家族とともに居住する場所(the place where an individual dwells with his family)をいう。」と定めており、さらに、韓米租税協約第4条第4項は「本条第5項を除くこの協約のいかなる規定にもかかわらず、いずれかの締約国は、この協約が効力を生じていないかのように、同締約国の市民又は居住者に対し課税することができる。」と定め、韓米租税協約第2条第1項(h)号によれば、「市民」は、韓国の場合は韓国の国民を意味するが、甲は、1999年・2000年にわが国の税法上の居住者であったと同時に米国税法上の居住者に該当するが、家族とともに居住した恒久的な住居は米国にあった点、韓米租税協約第3条第3項は同条第2項の規定による事由により一方の締約国の居住者とみなされる個人は、第4条を含め韓米租税協約の全ての目的上、一方の締約国の居住者としてのみみなされると定めているため、韓米租税協約第4条第4項でいうわが国の「居住者」に該当しない点、わが国の所得税法は居住者であるか否かによって課税される所得の範囲を区分し、わが国の居住者でない者には国内源泉所得に対してのみ課税するよう定めているが、わが国の国民であるか否かは、このような課税対象所得の範囲に影響がない点を総合すると、甲が1999年・2000年に韓米租税協約第3条第2項に従い米国の居住者とみなされるため、香港法人から借名株主名義で1999年・2000年に支払を受けた配当金は国外源泉所得に該当し課税することができないとした原審判断を正当であると認めた事例。
[6] 一つの納税告知書に本税と加算税を一緒に賦課するときは、納税告知書に本税と加算税それぞれの税額と算出根拠等を区分して記載しなければならず、いくつかの種類の加算税をともに賦課する場合には、加算税相互間においても種類別に税額と算出根拠等を区分して記載しなければならない。本税と加算税それぞれの税額と算出根拠及び加算税相互間の種類別税額と算出根拠等を明確に区分して記載せず本税と加算税の合計額等のみを記載した場合にも、課税処分は違法である。

2018ドゥ128判決[総合所得税賦課処分取消] [判例公報2019 311]