TOP各国新法令ニュース 中国新法令ニュースを更新致しました。

各国新法令ニュース

中国新法令ニュースを更新致しました。

  1. 外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度に関する国務院弁公庁の通知及び商務部の規定(商務部 2011年8月25日公布、同年9月1日施行)
     2011年2月3日国務院弁公庁発布の「外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度に関する通知(以下「通知」という。)」(关于建立外国投资者并购境内企业安全审查制度的通知;国办发〔2011〕6号;発布日より30日後に施行)、同年3月4日商務部発布の「外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度の実施に関係する事項の暫定規定(以下「暫定規定」という。)」(实施外国投资者并购境内企业安全审查制度有关事项的暂行规定;商务部公告2011年第8号;2011年3月5日施行)及び同年4月20日商務部発布の「外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度の実施に関する事務取扱指針」(关于实施外国投资者并购境内企业安全审查制度的办事指南)により、安全審査制度が確立され、その手続きが明確になった。このうち、暫定規定は同年8月31日までの時限立法であり(暫定規定第11条)、暫定規定の発布後に行われたパブリックコメントを受けて同年8月25日に発布された「商務部が外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度を実施することに係る規定(以下「規定」という。)」(商务部实施外国投资者并购境内企业安全审查制度的规定;商务部公告2011年第53号;2011年9月1日施行)がこれに代わり9月1日から施行されている。暫定規定と比べ、規定では安全審査の潜脱防止(規定第9条)、安全審査担当者の秘密保持義務(規定第11条)に関する条文が新たに追加されたほか、各条文間の順序変更、規定内容の一部変更・追加、詳細化等(規定第2条、第3条、第4条、第6条第3項、第7条第1項第2号、第8条、第10条)が行われている。従来、「反独占法」第31条、「外国投資家による国内企業の買収に関する規定」第12条等において、外国投資家による国内企業の買収行為が国の安全に影響を及ぼす場合には安全審査を経なければならない旨の定めがあったものの、安全審査の具体的内容や手続きについては明らかになっていなかった。今般の通知及び規定は、安全審査が必要とされる買収行為の範囲や、安全審査の内容、手続き・必要資料等を具体的に定めるものであり、実務へ大きな影響を与えるだろう。本通知により対象となる買収の概念及び対象となる業種(通知第1条)はいずれも従来の法令に比べて拡張されている。
    安全審査を行うのは、発展改革委員会、商務部及び買収対象業種の関連部門からなる「連合会議」(原文:联席会议)であるが、安全審査の申請は投資家が商務部に対して行う(通知第3条及び第4条、規定第1条第1項)。安全審査には一般審査と特別審査があり、特別審査とは、国家の安全に影響を及ぼすおそれがあるとの関係部門の意見に基づき、連合会議が特別に行う審査である(通知第4条第3項)。一般審査の手続きによれば、商務部による安全審査申請の受理から1ヶ月程度で連合会議による審査意見が出され、安全審査が完了することになる。他方、特別審査を経ることとなった場合には、さらに2ヶ月程度の期間がかかる可能性がある。
     今後、本通知の安全審査の範囲に属するにもかかわらず安全審査の申請をしていない場合には、地方主管部門が買収取引申請の受理手続きを一時的に停止し(規定第2条)、安全審査申請の受理通知後15営業日内は買収取引の手続きを行うこともできない(規定第6条第3項)ので注意が必要である。なお、安全審査の正式な申請をする前に、手続上の問題について商務部に事前相談することができる(規定第4条)。 (谷友輔弁護士・田原直子弁護士)
  2. 経営者集中の競争への影響の評価に関する暫定施行規定(商務部 2011年8月29日公布、同年9月5日施行)
     経営者集中審査時における考慮要素については、「反独占法」第27条に①市場シェア及び市場支配力、②市場集中度、③市場参入及び技術進歩に対する影響、④消費者及び他の経営者に対する影響、⑤国民経済の発展に対する影響、⑥その他の6項目が掲げられている。しかしながら、経営者集中審査の実体的判断基準については、これまで、上記各項目以上に詳細な内容を定める規則やガイドラインは制定されていなかった。
     本規定は、経営者集中審査の検討対象となる経営者及び市場の範囲について説明した上で(第4条)、上記各項目についての商務部の考え方を示すことを主な内容としている(第5条~第12条)。具体的には、以下のとおり。
    ①市場支配力の考慮要素を列挙した(第5条)。
    ②市場集中度の分析方法としてハーフィンダール指数(以下「HHI指数」という。)及びConcentration-Ratio(以下「CRn指数」という。)を用いることができる旨明文化した(第6条)。
    ③経営者集中と市場参入の相互関係について説明し、市場参入の難易度に関する考慮要素を明らかにした(第7条)。
    ④経営者集中の技術進歩、消費者、他の経営者、国民経済の発展に対する影響について、それぞれ積極、消極の両影響について説明した(第8条~第11条)。
    ⑤審査時に考慮すべきその他の要素として、公共の利益、経済効率、破綻企業の抗弁、対抗的バイヤーパワーを掲げた(第12条)。
     経営者集中申告に当たっては、上記各ポイントを踏まえて、経営者集中によりもたらされる積極的影響を強調し、かつ、消極的影響が少ないことを主張立証していくことにより、よりスムーズな申告作業を行うことができるものと考える。 (谷友輔弁護士)