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各国新法令ニュース

中国新法令ニュースを更新致しました。

  1. 上海・重慶における個人住宅への建物税課税(上海市人民政府・重慶市人民政府 2011年1月27日発布、同月28日施行)
     従来、「建物税暫定条例」(房産税暫行条例;国務院1986年公布)第5条第4号は「個人所有の非営業用建物」については,建物税(原文:房産税)を免除すると定めていた。しかし、社会情勢の変化に伴う収入格差を調節し、土地の集約利用を促進するため、国務院常務会議は、一部の都市において個人住宅の建物税を試験的に徴収することを決定した。この国務院の決定を実施するため、上海市で「一部個人住宅に対する建物税徴収の試験プロジェクトを展開することに関する暫定弁法」(上海市开展对部分个人住房征收房产税试点的暂行办法;上海市人民政府2011年1月27日発布,同月28日施行)、重慶市で「一部個人住宅に対する建物税徴収の改革試験プロジェクトを展開することに関する暫定弁法」(关于开展对部分个人住房徴收房产税改革试点的暂行办法)及び「個人住宅建物税徴収管理実施細則」(个人住房房产税徴收管理实施细则)(ともに重慶市人民政府2011年1月27日発布,同月28日施行)が制定された。
     上海市の規定は、新たに購入する住宅を課税対象とする。当面の税率は年0.6%とされ、購入価格が前年度における新築住宅の平均販売価格の2倍以下である物件については0.4%とされる。上海市住民である者については、新たに購入する2軒目以降の住宅のみを課税対象とし、1軒目と2軒目の住宅を合わせて居住面積が1人当たり60平方メートル以下の場合に免税措置を設ける等の優遇的な内容となっている。
     一方、重慶市の規定は、当面の間、①個人が有する一戸建て商品住宅(原文:独栋商品住宅)、②個人が新たに購入する高級住宅、③重慶市内において戸籍を持たず、企業主でなく、職業を持たない個人が新たに購入する2軒目以降の住宅を課税対象とする。税率は、①②については1平方メートル当たり購入価格(原文:交易单价)が、試験区域における過去2年間の成約面積(原文:成交建筑面积)の平均単価の3倍未満の場合に0.5%;3~4倍未満の場合に1%;4倍以上の場合に1.2%とする。③については、0.5%とした。
     なお、住宅の評価について、上海市・重慶市ともに、当面は建物の購入価格(上海市については購入価格の70%)を根拠とする。上海市は、将来的には建物の市場価格に基づく評価額を根拠とし、評価額を定期的に見直す仕組みを構築するとし、重慶市についても将来的には建物評価額を根拠にするとした。(田原直子弁護士)
  2. 「会社法」の適用の若干の問題に関する最高人民法院の規定(三)(最高人民法院 2011年1月27日公布、同年2月16日施行)
    本司法解釈は、「会社法」 に関する司法解釈(1) 及び(2) に続く3つ目の司法解釈であり、2011年2月16日より施行されている。
    2005年の「会社法」改正後、会社資本の形成及び維持、投資者間の利益の均衡、会社債権者の利益の保護、会社設立過程における債務の負担等に関する分野において多くの問題が生じていたが、各主体の利益に及ぼす影響が比較的大きいにもかかわらず、会社法の上記問題についての規定が簡略なものにとどまっており、適用の際に意見の相違が多く、処理も難しいといった状況を生じさせていた。これらの問題につき規範化すべく、本司法解釈が制定された。
    本司法解釈は、主として、①会社成立前の債務の責任主体の具体化、②非自己保有財産の出資行為の効力の確定、③典型的な非貨幣出資について、払い込まれたか否かの判断基準及び救済方式の確立、④出資義務を果たしていないこと(出資義務の全部不履行及び一部不履行を含む。)及び出資の引出しの認定、訴訟救済方式及び民事責任の明確化、⑤株主等の権利を制限する条件及び方式の規範化、⑥名義株主、実質出資者及び会社債権者間の利益の適切な均衡の6つの分野について規定している(答記者問 )。
    本司法解釈においては、有限責任会社の設立時の株主を含む意味で「発起人」という用語が使用されている。また、総じて外観主義の基準によって確定するとされており、(a)会社成立前の段階における責任主体の確定時の判断基準がその契約名義により区別されている点(第2条、第3条)、(b)非自己保有財産による出資の効力(第7条第1項)、名義株主による出資持分の処分行為の効力(第26条第1項)及び出資持分が二重譲渡等された場合の効力(第28条第1項)の判断について物権法第106条(善意取得)の規定を参照するとされている点、(c)会社債権者による名義株主に対する責任追及が認められている点(第27条)等に現れている。
    また、(i)「外商投資企業紛争事件の審理に係る若干の問題に関する規定(1)」 に続き、名義株主と実質出資者が異なる旨を約定する契約の有効性が認められ(第25条第1項)、関連する規定が設けられた点(第25条乃至第27条)、(ii)出資義務又は出資返還義務については、訴訟時効の制限を受けないとされた点(第20条)、(iii)禁止される出資引出行為の類型が例示列挙されている点(第12条)、(iv)訴訟によらずに、株主等の権利を制限することを認めるとともに、その場合の手続等が規定されている点(第6条前段、第17条、第18条第1項)も注目される。(森啓太弁護士)
  3. 外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度に関する国務院弁公庁の通知及び商務部の規定(国務院弁公庁 2011年2月3日発布)
     2011年2月3日国務院弁公庁発布の「外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度に関する通知(以下「通知」という。)」(关于建立外国投资者并购境内企业安全审查制度的通知;国办发〔2011〕6号;発布日より30日後に施行)及び同年3月4日商務部発布の「外国投資家による国内企業の買収に係る安全審査制度の実施に関係する事項の暫定規定(以下「規定」という。)」(实施外国投资者并购境内企业安全审查制度有关事项的暂行规定;商务部公告2011年第8号;2011年3月5日施行)により、安全審査制度が確立され、その手続きが明確になった。従来、「反独占禁止法」第31条、「外国投資家による国内企業の買収に関する規定」第12条等において、外国投資家による国内企業の買収行為が国の安全に影響を及ぼす場合には安全審査を経なければならない旨の定めがあったものの、安全審査の具体的内容や手続きについては明らかになっていなかった。今般の通知及び規定は、安全審査が必要とされる買収行為の範囲や、安全審査の内容、手続き・必要資料等を具体的に定めるものであり、実務へ大きな影響を与えるだろう。本通知により対象となる買収の概念及び対象となる業種(通知第1条)はいずれも従来の法令に比べて拡張されている。
    安全審査を行うのは、発展改革委員会、商務部及び買収対象業種の関連部門からなる「連合会議」(原文:联席会议)であるが、安全審査の申請は投資家が商務部に対して行う(通知第3条及び第4条、規定第1条1項)。安全審査には一般審査と特別審査があり、特別審査とは、国家の安全に影響を及ぼすおそれがあるとの関係部門の意見に基づき、連合会議が特別に行う審査である(通知第4条第3項)。一般審査の手続きによれば、投資家による安全審査の申請から1ヶ月程度で連合会議による審査意見が出され、安全審査が完了することになる。
     今後、本通知の安全審査の範囲に属するにもかかわらず安全審査の申請をしていない場合には、地方主管部門が買収取引の申請を受理せず(規定第2条)、安全審査の申請後15営業日内は買収取引の手続きを行うこともできない(規定第5条第3項)ので注意が必要である。なお、安全審査の正式な申請をする前に、手続上の問題について商務部に事前相談することができる(規定第3条)ので、このような事前相談の制度を積極的に活用するのが望ましい。(田原直子弁護士)
  4. 持分投資企業に関する上海市等の規定(国家発展改革委員会弁公庁 2011年1月31日発布)
     上海市における持分投資の発展を促し、外商投資持分投資企業(以下「投資企業」という。)及び外商投資持分投資管理企業(以下「管理企業」という。)を規律するため、「上海市の外商投資持分投資企業の試験プロジェクト業務の展開に関する実施弁法」(关于本市开展外商投资股权投资企业试点工作的实施办法)が発布された。本弁法は上海市の投資企業及び管理企業(第2条)について、その業務内容(第7条、第13条、第31条)、設立の申請手続き(第10条、第11条、第15条)、名称(第9条、第14条)等を定める。
     従来、外国投資家によるファンドについては、「外商投資ベンチャー投資企業管理規定」並びに「外国の企業または個人による中国国内における組合企業の設立に係る管理規則」及び「外商投資組合企業登記管理規定」が規律していた。これらの規定のもと、典型的なファンドのスキームとして、外国PEファンド等が直接ジェネラル・パートナーとなる例や、中国で設立したJVや子会社をジェネラル・パートナーにする例が多く見られた。ただ、いずれのスキームを用いるにしても、「外商投資方向指導規定」や「外商投資産業指導目録」等の外資規制に服することが従来のファンドの最大の問題点であった。
     本弁法により設立された投資企業には、外商投資に関する規定が適用される(第18条)ので、この点では従来のファンドと使い勝手は変わらない。本弁法の最大の特徴は、第四章に外商投資持分投資試験プロジェクト企業(以下「パイロット企業」という。)に関する規定を置いたことである(第19条)。パイロット企業の認定を受けた場合には、外貨資金をもって自らが発起設立した持分投資企業にその募集資金総額の5%を超えない範囲で出資することができ、この出資は投資先企業の元々の性質に影響しない(第24条)。つまり、従来のファンドで問題視されてきた外資規制を免れることができるのがパイロット企業の最大のメリットとなる。
     また、今般、国家発展改革委員会弁公庁より「試験地区の持分投資企業の発展及び届出管理業務を更に規範化することに関する通知」(关于进一步规范试点地区股权投资企业发展和备案管理工作的通知)が発布された。本通知は地理的な適用範囲が上海市の規定と異なるが、持分投資企業の資本募集及び投資活動並びに届出管理手続きについて規律する。本通知第5条は届出手続きに関して、申請の主体、手続きに要する時間、必要資料等を具体的に定める(ただし、資本が5億人民元に満たない持分投資企業は届出管理手続を免れる)。このように本通知が持分投資企業について届出管理手続きを定めていることに注意が必要である。(田原直子弁護士)
  5. 非居住者企業所得税管理の若干の問題に関する公告(国家税務総局 2011年3月28日発布、同年4月1日施行)
    中華人民共和国企業所得税法及び同実施条例は、非居住者企業の中国国内源泉所得に対して課税することを原則としている。本公告は、これらの法令に基づき、非居住者企業の所得税管理に関する問題について定めるもので、全7条から構成される。
    2009年以降、非居住者企業に対する企業所得税の徴税管理強化等を目的として、「非居住者企業所得税源泉徴収管理暫定規則」、「非居住者企業所得税確定申告管理規則」、「非居住者企業の出資持分権譲渡所得に係る企業所得税の管理の強化に関する通知」、「非居住者企業所得税査定徴収管理規則」等の関連法規が相次いで公布されてきた。本公告は、このような課税強化の流れの中で、非居住者企業に対する企業所得税に関して、その解釈上の諸問題を明らかにするものである。
    本公告は、①中国国内企業と非居住者企業間の契約に基づく不労所得に係る企業所得税の源泉徴収方法(第1条)、②担保料の税務処理(第2条)、③土地使用権譲渡所得に係る税金の徴収(第3条)、④ファイナンスリース及び不動産賃貸による賃貸料所得の税務処理(第4条)、⑤配当金及び特別配当等の権益性投資收益に係る企業所得税の処理(第5条)及び⑥「非居住者企業の株主権益譲渡所得に係る企業所得税の管理の強化に関する通知(国税函〔2009〕698号)」に関連する問題(第6条)について定める。
    本公告は、賃貸料、利息、配当金等の非居住者企業の中国国内源泉所得について、源泉徴収の対象、時期、主体等を上記①から⑤のそれぞれの場合に応じて具体的に定める。また上記⑥の法規は、非居住者企業が中国居住者企業の出資持分を直接又は間接譲渡する場合の所得に係る源泉徴収について定めたものであるが、本公告により主管税務局や語義が明確にされた。
    なお、本公告は2011年4月1日より施行されたが、施行前に発生したものの税務上未処理の事項についても本公告に基づいて取り扱うものとされる(第7条)。(田原直子弁護士)
  6. 人民調停合意の司法確認手続に関する若干の規定(最高人民法院 2011年3月23日公布、同月30日施行)
    (最高人民法院 2011年3月23日公布、同月30日施行)
    最高人民法院により2009年7月24日に発布された「訴訟及び非訴訟が相互に連携する矛盾・紛争解決メカニズムの確立・健全化に関する若干の意見」 (「若干の意見」)において、訴訟外の調停を経て形成された合意に関し、当事者が裁判所に司法確認を申し立て、裁判所の確認を得ることにより、当該合意内容に対して裁判所から強制執行力を付与されるという「司法確認手続」が確立された。その後、2010年8月28日に公布された「人民調停法」 においても当該手続に関する規定が置かれている 。本規定は、人民調停委員会の調停を経て形成された民事調停合意の司法確認手続について、管轄、受理期間、不受理事由、審査期間、審査方式、確認がされない事由、第三者の権利救済、費用(の不徴収)等について具体的な規定を定めている。(森啓太弁護士)