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各国新法令ニュース

中国新法令ニュースを更新致しました。

  1. 外商投資企業紛争事件の審理における若干の問題に関する規定(一)(最高人民法院 2010年8月5日公布、同月16日施行)
     直近の2年間で発生した外商投資企業に関する事件は、渉外民商事事件の件数の約20%を占め、中でも出資持分譲渡、登記上の投資主体(以下「名義的出資者」)が別の主体(以下「実質投資者」)からの委託を受けて出資をしているに過ぎないような状況(以下「匿名投資」)、買収、清算等に関する紛争が大幅に増加しているとされる。
    かかる現状を受け、
    ①出資者間の契約(以下「合弁契約等」)の効力と認可との関係(第1条~第3条)
    ②現物出資の変更登記手続の遅延に対する救済措置(第4条)
    ③出資持分の譲渡・質入の効力及び救済措置(第5条~第13条)
    ④匿名投資の処理(第14条~第20条)
    ⑤出資者としての地位が不当に奪われた場合の救済措置(第21条)
    をその内容とする本司法解釈が制定された。
    ①行政審査認可を経ていない合弁契約については、効力を生じていない旨を認定しなければならず、合弁契約等が効力を生じていない旨認定された場合も、当該契約における、当事者による認可申請義務の履行に係る条項及び当該認可申請義務により設定される関連条項の効力に影響を及ぼさない旨規定している(第1条)。
    ③出資持分譲渡契約が認可を経ていない場合の処理については、(ⅰ)契約解除及び譲渡人に対する損害賠償請求(第5条)、(ⅱ) 譲渡人に対する外商投資企業との認可申請義務共同履行請求(第6条第1項)、(ⅲ)認可申請義務の履行を命ずる判決の履行を譲渡人及び外商投資企業が拒絶した場合における契約解除及び損害賠償請求(第6条第2項)等、譲受人に対する多種の救済手段を規定している。
    ④外商投資企業における匿名投資に係る紛争の処理に関しては、外商投資企業の出資者としての地位は原則として名義的出資者が有することを前提に、実質投資者の出資者としての身分の確認請求(第14条)、実質投資者の名義的出資者に対する出資委託合意の履行に係る請求(第15条)、出資委託合意が無効である場合における当事者双方の利益のバランス(第18条、第19条)等、実質投資者に対する救済措置を定めている。
    (谷友輔弁護士)
  2. (上海市)当市企業の各種人材が基本養老年金の受給申請手続を柔軟に遅らせることに関する試行意見(上海市人力資源社会保障局 2010年9月6日発布、2010年10月1日施行)
     本試行意見は、上海市の都市・町養老保険に加入している企業における専門技術職資格を有する人員、技師又は高級技師証書を有する技能人員及び企業が必要とするその他の人員が、本試行意見所定の要件を充足する場合に基本養老年金の申請受領を遅らせることができる旨定める。
    現在、中国企業における定年退職年齢は、一般に男性満60歳、女性労働者満50歳、女性幹部満55歳とされているが、これにより上海市における一部の労働者の定年退職年齢を男性65歳、女性60歳まで延長することが可能となり、①定年退職年齢を迎えた各種人材の業務継続による能力発揮、②基本養老保険料の納付継続による個人口座養老年金待遇の向上といった効果が見込まれている。
    現在、中国では高齢化問題が深刻化しており、特に、上海市は中国国内でもいち早く高齢化が訪れる都市となる。そのため、これに対する対応策として、基本養老年金受給開始時期を繰り延べ、定年退職年齢を引き上げることが検討されており、本試行意見はそのような政策的措置の一環である。
    (谷友輔弁護士)
  3. 労働紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈(三)(最高人民法院 2010年9月13日公布、同月14日施行)
     労働紛争事件の審理に関する司法解釈としては、既に「労働紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈」(2001年4月16日公布、同月30日施行)及び「労働紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈」(2006年8月14日公布、同年10月1日施行)が公布されている。
    これらの司法解釈が公布・施行された後に、「労働契約法」(2007年6月29日採択、同日公布、2008年1月1日施行)及び「労働紛争調停・仲裁法」(2007年12月29日採択、同日公布、2008年5月1日施行)が公布・施行されている。本司法解釈は、これらの法律に関する手続的な規定を中心に全18条で構成されている。なお、関連報道によれば、労働契約法の実体的な問題については今後、調査・研究が行われ、司法解釈(四)が出されることが予定されているようである。
    本司法解釈において規定されている主な内容は、次のとおりである。
    (一)人民法院に対する追加賠償金の支払申立(「労働契約法」第85条)
    (二)適法な経営資格を具備しない雇用単位の出資者及び営業許可証の貸出人の責任が労働紛争の主体とされうること(第4条、第5条)、仲裁裁決で遺漏された当事者の追加及び一括処理(第6条)
    (三)時間外労働賃金の挙証責任(第9条)
    (四)労働契約の解除・終了関連手続の実施等についての合意の有効性(第10条)
    (五)仲裁裁決をすべき期間徒過時における人民法院への訴え提起の制限(第12条)
    (六)仲裁裁決が終局裁決(「労働紛争調停・仲裁法」第47条)となる紛争に該当するか否かの判断基準(第13条、第14条)、労働者及び雇用単位が終局裁決に対し訴訟・不服申立てを同時に提起した場合の処理(第15条)、雇用単位が終局裁決の取消しを求めた場合の執行停止等(第18条)の終局裁決に関する処理
    (森啓太弁護士)
  4. 固定資産投資プロジェクト省エネルギー評価・審査暫定規則(国家発展改革委員会 2010年9月17日発布、2010年11月1日施行)
     「省エネルギー法」が2007年に改正された際に、「国は,固定資産投資プロジェクト省エネルギー評価・審査制度を実行する」という規定が新設された。本規則は,この制度の具体的内容を定めるものである。
    本規則は、各レベルの人民政府の発展改革部門が管理する固定資産投資プロジェクトに適用される(2条)。管理の意味は明らかではないが、第10条の規定からは、発展改革部門への届出が要求されるに過ぎないプロジェクトも適用対象に含まれると理解される。したがって、多くの製造業の外商投資プロジェクト(および非製造業でも建物の建設等を伴うプロジェクト)に本規則に基づく「省エネルギー評価」が要求されることになると予想される。
    省エネルギー評価は必要的であり、プロジェクトの実施に先立ち行わなければならない(4条)。省エネルギー評価には分類管理が用いられており、プロジェクトの(建設完成・生産開始後の)年間エネルギー消費量に応じて、厳格な「報告書」、簡便な「登記表」、その中間の「報告表」の3種のいずれかのタイプの評価が要求される(第3条、第5条)。「環境影響評価法」の定める環境影響評価の制度と類似の規制枠組みといえる。評価に必要なコストは企業側の負担と理解される(8条と12条の対比から)。
    「省エネルギー評価」に対する審査(「省エネルギー審査」)(3条)については、各級政府のプロジェクト管理権限に従った所轄別管理が行われる(9条)。審査期間は一応定められている(14条1項)が、外部審査の期間を含まないとされている(同条2項)。従って、実質的に審査期間が設定されていないのと同様ではないかと懸念される。
    (岩井久美子弁護士)
  5. 契約違法行為監督処理弁法(国家工商行政管理総局 2010年10月13日発布、2010年11月13日施行)
     本弁法は、私法上の「契約違法行為」に対する工商行政管理機関の監督・処理(第4条)について定めた部門規則であり、行政法としての性格を有する。本弁法にいう「契約違法行為」とは、自然人、法人その他の組織が契約を利用し、不法な利益を取得することを目的とし、法律法規及び本弁法に違反する行為である(第2条)。本弁法はこの「契約違法行為」を、①契約詐欺(第6条)、②契約を利用し、賄賂、脅迫、悪意の通謀等の方法により、不法な利益を取得する行為(第7条)及び③事業者が書式条項(原文:格式条款)を利用し、自己の責任を免除し、消費者の責任を加重し、又は消費者の権利を排除する行為(第9~第11条)の三類型に分類し、各類型について具体的な規定を置いている。第6条から第11条までの規定に違反した者に対しては、他法規で既に規定されている場合にはそれに従い、他法規で規定されていない行為については警告、違法所得の三倍以下(但し3万元が上限)の罰金といった行政罰を課すことができる(第12条)。他方、情状が軽い場合には行政処罰を課さない(又は軽く処罰する)こととされている(第13条)。
    (谷友輔弁護士・田原直子弁護士)
  6. 輸入外貨支払照合消込制度改革の実施に関する問題についての通知(国家外貨管理局 2010年10月20日発布)
     2010年10月20日に、国家外貨管理局により「輸入外貨支払審査照合制度の改革を実施することの関連問題に関する通知」(「本通知」)が発布され、同通知の附属文書である「貨物貿易輸入外貨支払管理暫定施行弁法」(「本弁法」)及び同「実施細則」が2010年12月1日から施行された。これに伴い、「貿易輸入外貨支払消込照合監督管理暫定施行弁法」(1997年3月1日施行)等これまで貨物輸入に伴う外貨支払の根拠規定となっていた法令、通知等の大部分が廃止されている。なお、天津、江蘇、山東、湖北、内モンゴル、福建及び青島においては、2010年5月1日から、試験的に新制度と同様の制度が導入されていた(「輸入外貨支払消込照合制度改革試験プロジェクトの実施関連問題についての通知」(2010年4月2日発布))。
    輸入外貨支払消込照合制度改革の主要な内容として、報道 においては、次の点が挙げられている。
    ①企業の正常な業務について、現場消込照合手続をする必要がなくなり、貿易における対外支払が極めて便利になる。
    ②銀行が企業のために行っていた輸入外貨支払業務のネットワーク・チェック手続を廃止し、銀行の負担を軽減し、銀行の日常業務操作の便利を図る。
    ③外貨管理局が企業に対してリスト管理を実行することにより、輸入外貨支払リスト情報が全国において共有され、企業が別の地域において外貨を支払う場合に、外貨管理局に対して事前に届出手続を行う必要がなくなる。
    ④外貨管理局は、「貿易外貨収受・支払チェック・システム」を利用して企業を主体として非現場チェック及びモニタリング事前警告を行い、異常な取引主体に対し現場チェックを行い、企業分類考査等級を確定し、かつ、分類管理を実施する。
    また、同報道によれば、この改革の実施を通じて、次のことが実現されるとされている。
    ①外貨管理の理念及び方式の刷新が推進され、逐次消込照合から総量チェックへ、現場消込照合から非現場チェックへ、行為の監督管理から主体の監督管理へと転換する。
    ②貿易の便利化を推進し、企業輸入外貨支払手続を簡素化し、企業のコストを下げ、企業経営に便宜を図り、合法的企業の正常な業務活動を「障害なく」行わせる。
    ③適切にリスクを防止し、外貨情勢に変化が生じた場合及び貿易主体が不当な行為を行った場合には、外貨管理局は、有効な統制措置を講じ、「B類」及び「C類」企業に対する現場チェックの程度を強め、厳格な分類監督管理措置を実施し、かつ、違法企業に対する処罰を行う。
    (岩井久美子弁護士・谷友輔弁護士・森啓太弁護士)
  7. 中華人民共和国社会保険法(全国人民代表大会常務委員会 2010年10月28日採択、2011年7月1日施行)
     本法は、基本養老保険、基本医療保険、労災保険、失業保険及び出産保険の5種類の社会保険の各内容を定めると共に、社会保険料の徴収、社会保険基金、社会保険運営事務、社会保険監督等について定める。本法は、これまで個別に規定されていた社会保険に関する規律を整理した社会保険の一般法として位置づけられる。
    外商投資企業との関係では、「外国人は、中国国内で就業する場合には、本法の規定を参照し社会保険に参加する(第97条)。」という規定が注目される。この規定も含め本法には簡単な規定しかないので、本法の規定を具体化する個別の立法によらなければ制度の運用が明らかにならず、2011年7月1日の本法施行までの間、立法の動向が注目される。
    (田原直子弁護士)
  8. 外国企業常駐代表機構登記管理条例(国務院 2010年11月19日公布、2011年3月1日施行)
     本条例は、外国企業常駐代表機構(第2条。以下「駐在員事務所」という。)の設立・変更・抹消登記とその監督管理について、従来の規定を整理したものである。本条例は、総則;登記事項;設立登記;変更登記;抹消登記;法律責任;附則の全七章から構成される。
    近年、駐在員事務所による脱法行為・違法行為が増加していることを背景に、本条例は、駐在員事務所に対する監督管理について、従来の規定に比べより詳細に定めている。駐在員事務所の違反行為に対し、登記機関に調査、資料等の差押え等の職権を認める(第21条)ほか、第6章において違反行為に対する罰則規定を詳細に定めた。第6章の罰則規定は、従来の規定より強化され罰金額も引き上げられている。また、年度報告(第6条)、会計帳簿の設置(第7条)、駐在員事務所の設立・変更についての公告(第20条)、親会社である外国企業の変更について期限付きの届出(第31条)を義務付けていることから、駐在員事務所及び外国企業の日常的な業務に対する管理監督を強化する狙いが伺える。さらに、外国企業については、2年以上営業していることを駐在員事務所の設立条件としている(第23条第1項第2号)。
    代表の人数(第11条)、設立認可の要否(第23条第2項)については、従来の規定を確認したにとどまり、実務に大きな影響はないと思われる。また、非営利活動の内容(第14条)、変更・抹消登記の期限(第27条第1項、第32条)を明確にした。
    (田原直子弁護士)
  9. 商品建物賃貸借管理規則(住宅および都市・農村建設部 2010年12月1日発布、2011年2月1日施行)
     本弁法は、賃貸借にまつわるトラブルの増加を受け、賃貸借管理を強化して賃貸借を規範化して当事者双方の権益を保護するため制定されたものであり、本弁法により1995年施行の《城市房屋租赁管理办法》が廃止された。旧弁法との主な異同は下記のとおり。①賃貸借契約締結後30日内の登記届出義務が必要であることは旧弁法と同様。②登記届出必要事由・手続期間の明確化。登記届出必要事由についき、旧弁法では賃貸借契約の「变更、终止」とされていたのに対し、本弁法では「登记备案内容发生变化、续租或者租赁终止的」とし、契約更新の際にも登記届出が必要であることが明確にされた。また、旧弁法では「契約締結後30日内」とのみ規定され、変更・終了登記については明確でなかった手続期間が本弁法では「登记备案内容发生变化、续租或者租赁终止的,当事人应当在三十日内」と明確に規定された(第19条)。)③「房屋租赁登记备案证明」制度の導入。本弁法では、旧弁法で存在した《房屋租赁证》の制度が規定されておらず、代わりに「房屋租赁登记备案证明」の制度が規定されている。④譲渡と賃貸借の関係について。本弁法第12条は、「房屋租赁期间内,因赠与、析产、继承或者买卖转让房屋的,原房屋租赁合同继续有效。」と規定し、売買のみならず贈与、財産分割及び相続により建物所有権が移転した場合にも原賃貸借契約が有効であるとしている。本弁法のこの規定だけからは、原賃貸借契約が「譲受人との間で」有効であるという意味なのか否かが必ずしも明確ではないが、《契約法》及び司法解釈の規定に鑑みると、新弁法第12条も、原賃貸借契約が「譲受人との間で」有効であるという意味、即ち、「新所有者に対して元の所有者との間の賃貸借契約の履行を求めることができる。」意味であると理解できそうである。⑤賃貸借の登記届出の効力についての規定が存在しないことは、旧弁法と同様である。
    (岩井久美子弁護士)
  10. 『労災保険条例』の改正に関する決定(国務院 2010年12月20日公布、2011年1月1日施行)
     本決定は、労災保険条例(以下「旧条例」という。国務院2003年4月27日発布、2004年1月1日施行)を改正するものである。2004年の旧条例の施行以来、労災保険の加入者は中国全土で条例施行前の4575万人から1億5800万人(2010年9月時点)へ増加し、旧条例は労災保険の推進と規範化に貢献してきた。
    しかし、経済社会の発展に伴い①事業組織、社会団体、民間非企業組織等の組織の従業員についての労災政策が不明確であること、②労災認定の範囲に合理性がないこと、③労災認定、鑑定及び紛争処理に関する手続きが煩雑で解決に時間を要すること、④補助金の給付標準が低いこと等の問題が明らかになってきた。
    2011年7月1日施行の社会保険法(全人代常委会2010年10月28日採択)の制定により社会保険に関する規律が整理されたことに伴い、労災保険についても旧条例の問題点を見直し、加入者のより一層の増加を企図して本決定が公布された。
    (田原直子弁護士)
  11. (上海市)従業員代表大会条例(上海市人民代表大会常務委員会 2010年12月23日採択・同日公布、2011年5月1日起施行)
     本条例は、上海市の従業員代表大会(原文:职工代表大会)について定めたもので、総則;職権;従業員代表;組織制度;議事規則;業務機構;区域性、業界性従業員代表大会;監督検査及び法律責任;附則の全9章、全48条から構成される。これまでに四川省、湖南省、黒龍江省、雲南省、江西省、山東省、河北省、チベット自治区、新疆ウイグル自治区等で従業員代表大会条例が制定されているが、本条例は、他の地方の従業員代表大会条例と比較して、区域性、業界性従業員代表大会の制度(第7章)を定めたことが特徴的である。
    本条例にいう従業員代表大会は、企業事業組織(第2条)の従業員による民主的選挙によって選出された従業員代表(第14条第2項)から構成される(第20条第1項)。従業員代表の定数は、全従業員数との比例で決まるが、最少でも30名となるので(第20条)、全従業員数との人数比は特に小規模の企業では相当高いものとなる
    従業員代表大会は、①第9条所定の事項を審議・提案すること、②第10条所定の事項を審議通過すること、③第11条所定の事項を審査監督すること、④第12条所定の人員の民主的選挙、⑤第13条所定の人員の民主的評議等の職権を有する(第8条)。
    また、本条例は、従業員代表(第9条)の権利義務(第16条及び第17条)、従業員代表大会と労働組合(原文:工会)の関係(第5条)、労働組合の職責(第34条及び第35条)についても定める。
    (田原直子弁護士)