外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)存続期間が延長された医薬品の特許権の効力の範囲に関する事件[大法院2019.1.17.宣告])
【判示事項】
存続期間が延長された医薬品の特許権の効力が及ぶ範囲を判断する基準及び特許権者が薬事法に従い品目許可を受けた医薬品と特許侵害訴訟において相手方が生産等をした医薬品が薬学的に許容可能な塩等において差異があるものの、通常の技術者が容易にこれを選択しうる程度に過ぎず、人体に吸収される有効成分の薬理作用により表れる治療効果や用途が実質的に同一である場合、存続期間が延長された特許権の効力が相手方が生産等をした医薬品に及ぶのか否か(積極)
【判決要旨】
旧特許法(2011年12月2日法律第11117号により改正される前のもの、以下同じ)第89条は、「特許発明を実施するために他の法令の規定により許可を受け、又は登録等をしなければならず、その許可又は登録等(以下「許可等」という)のために必要な活性・安全性等の試験により長期間を要する大統領令で定める発明である場合には、第88条第1項の規定にかかわらず、その実施することのできなかった期間につき5年の期間内において当該特許権の存続期間を延長することができる。」と規定し、薬事法等による許可等を受けるために特許発明を実施することのできない期間分だけ特許権の存続期間を延長してもらえる制度を設けている。上記条項でいう「長期間を要する大統領令で定める発明」の一つとして旧特許法施行令(2007年6月28日大統領令第20127号により改正される前のもの)第7条第1号は、特許発明を実施するために旧薬事法(2007年4月11日法律第8365号により全部改正される前のもの)第26条第1項又は第34条第1項の規定により品目許可を受けなければならない医薬品の発明を挙げている。
他方、存続期間が延長された特許権の効力について旧特許法第95条は、「その延長登録の理由となった許可等の対象物件(その許可等において物件が特定の用途が定められている場合においては、その用途に使用される物件)に関するその特許発明の実施以外の行為には及ばない。」と規定している。特許法は、このように存続期間が延長された特許権の効力が及ぶ範囲を規定し、請求範囲を基準としないで「その延長登録の理由となった許可等の対象物件に関する特許発明の実施」と規定しているに過ぎず、許可等の対象「品目」の実施に制限してはいなかった。
このような法令の規定と制度の趣旨等に照らすと、存続期間が延長された医薬品の特許権の効力が及ぶ範囲は、特許発明を実施するために薬事法に従い品目許可を受けた医薬品と特定疾病に対する治療効果を表わすものと期待される特定の有効成分、治療効果及び用途が同一であるか否かを中心に判断しなければならない。特許権者が薬事法に従い品目許可を受けた医薬品と特許侵害訴訟において相手方が生産等をした医薬品(以下「侵害製品」という)が薬学的に許容可能な塩等において差異があっても、発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば容易にこれを選択しうる程度に過ぎず、人体に吸収される有効成分の薬理作用により表れる治療効果や用途が実質的に同一であるならば、存続期間が延長された特許権の効力が侵害製品に及ぶというべきである。
2017ダ245798判決[特許権侵害禁止等] [判例公報2019 459]