TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)外国会社間の紛争であっても主たる事務所等を韓国に置く場合韓国法院に訴えることができるとした事件[大法院2021.03.25.宣告])

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外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)外国会社間の紛争であっても主たる事務所等を韓国に置く場合韓国法院に訴えることができるとした事件[大法院2021.03.25.宣告])

【判示事項】

[1] 国際私法第2条第1項で定める「実質的関連」の意味及び判断基準
[2] 民事訴訟法管轄規定が国際裁判管轄権を判断するのに最も重要な判断基準として作用するか否か(積極)/国際裁判管轄においても被告の主たる事務所がある場所が営業関係の中心的場所であり重要な考慮要素であるか否か(積極)
[3] 国際裁判管轄において特別管轄を考慮する理由/原告が訴えを提起した当時に被告の財産が大韓民国にある場合、大韓民国法院の国際裁判管轄権を認めることができるか否か(積極)
[4] 国際裁判管轄において予測可能性を判断する基準/法人である被告が大韓民国に主たる事務所や営業所を置いて営業活動を行う場合、大韓民国法院に被告を相手に財産に関する訴えが提起されるであろうという点を容易に予測することができるか否か(積極)
[5] 国際裁判管轄権が併存しうるか否か(積極)
[6] 甲中国会社等が、乙株式会社が中国法に従い設立した丙中国会社と物品供給契約を締結し丙会社に物品を供給した後に物品代金の一部の支払を受けられなかったところ、乙会社を相手に丙会社の未払物品代金債務について連帯責任を負わなければならないと主張し、大韓民国法院に物品代金の支払を求める訴えを提起した事案において、諸般の事情に照らし上記訴えは大韓民国と実質的関連があるとした事例

【判決要旨】

[1] 国際私法第2条第1項は、「法院は、当事者又は紛争となった事案が大韓民国と実質的関連がある場合に国際裁判管轄権を有する。この場合、法院は実質的関連の有無を判断するにあたり国際裁判管轄配分の理念に符合する合理的な原則に従わなければならない。」と定めている。「実質的関連」は、大韓民国法院が裁判管轄権を行使することを正当化する程度に当事者又は紛争となった事案と関連性があることを意味する。これを判断する際には、当事者の公平、裁判の適正、迅速と経済等国際裁判管轄配分の理念に符合する合理的な原則に従わなければならない。具体的には、当事者の公平、便宜、予測可能性のような個人的な利益のみならず、裁判の適正、迅速、効率、判決の実効性のような法院や国家の利益も併せて考慮しなければならない。このように多様な国際裁判管轄の利益のうちいかなる利益を保護する必要があるかは、個別事件において実質的関連性の有無を合理的に判断し決定しなければならない。
[2] 国際私法第2条第2項は、「法院は、国内法の管轄規定を参酌して国際裁判管轄権の有無を判断するが、第1項の規定の趣旨に照らし国際裁判管轄の特殊性を十分に考慮しなければならない。」と定め、第1項で定める実質的関連性を判断する具体的基準又は方法として国内法の管轄規定を提示する。したがって、民事訴訟法管轄規定は国際裁判管轄権を判断するのに最も重要な判断基準として作用する。但し、このような管轄規定は国内的観点から備えられた裁判籍に関する規定であるため、国際裁判管轄権を判断する際には、国際裁判管轄の特殊性を考慮し、国際裁判管轄配分の理念に符合するように修正して適用しなければならない場合もある。
民事訴訟法第2条は、「訴えは、被告の普通裁判籍がある場所の法院が管轄する。」と定めており、民事訴訟法第5条第1項前文は、「法人、その他社団又は財団の普通裁判籍は、これらの主たる事務所又は営業所がある場所に従い定める。」と定めている。これは、原告に被告の主たる事務所又は営業所がある法院に訴えを提起させることが管轄配分において当事者の公平に符合するためであるから、国際裁判管轄においても被告の主たる事務所がある場所は営業関係の中心的場所であり重要な考慮要素となる。
[3] 国際裁判管轄において特別管轄を考慮することは、紛争となった事案と実質的関連がある国家の管轄権を認めるためのものである。仮に、民事訴訟法第11条で財産がある場所の特別裁判籍を認めるように、原告が訴えを提起した当時に被告の財産が大韓民国にあった場合、大韓民国法院に被告を相手に訴えを提起し勝訴判決を得たときは直ちに執行し裁判の実効を収めることができるため、当事者の権利救済や判決の実効性の側面において大韓民国法院の国際裁判管轄権を認めることができるのである。
[4] 予測可能性は、被告と法廷地との間に相当な関連があるため法廷地法院に訴えが提起されることについて合理的に予見することができたかを基準に判断しなければならない。仮に、法人である被告が大韓民国に主たる事務所や営業所を置いて営業活動を行う際には、大韓民国法院に被告を相手に財産に関する訴えが提起されるであろうという点を容易に予測することができる。
[5] 国際裁判管轄権は排他的なものでなく併存することもできる。地理、言語、通信の便宜、法律の適用と解釈等の側面において他の国の法院が大韓民国法院よりも便利であるということのみで大韓民国法院の裁判管轄権を安易に否定してはならない。
[6] 甲中国会社等が、乙株式会社が中国法に従い設立した丙中国会社と物品供給契約を締結し丙会社に物品を供給した後に物品代金の一部支払を受けられなかったところ、乙会社を相手に丙会社の未払物品代金債務について連帯責任を負わなければならないと主張し、大韓民国法院に物品代金の支払を求める訴えを提起した事案において、乙会社の普通裁判籍である主たる事務所の所在地が大韓民国にあり、乙会社が大韓民国で営業活動を行っているため、上記訴訟を遂行するのに中国法院より大韓民国法院が不利であるとはいえない点、甲会社等が訴訟遂行と関連して地理上・言語上不利益を甘受し、自ら大韓民国法院において裁判を受けるという意思を表示しているため、甲会社等のこのような意思もまた尊重されなければならない点、丙会社の1人株主である乙会社としては、丙会社が物品代金債務をきちんと履行しない場合、乙会社の主たる事務所がある大韓民国法院に丙会社の物品代金債務と関連した訴えが提起されうるという点を予測できなかったとはいい難い点、乙会社の財産が大韓民国にあるため、甲会社等が勝訴した場合、当事者の権利救済や裁判の実効性の側面において大韓民国法院の国際裁判管轄を認めることが裁判の適正と迅速の理念に符合する点、上記事件に適用される準拠法が中国法であっても、国際裁判管轄権と準拠法は相互に異なる理念に従い支配されるものであるため、そのような事情のみで上記訴えと大韓民国法院との間の実質的関連を否定することはできない点等に照らし、上記訴えは大韓民国と実質的関連があるとするに十分であるにもかかわらず、これと異なった判断をした原審判決に法理誤解の誤りがあったとした事例。

2018ダ230588判決[物品代金] [判例公報2021 855]