TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.12 外国投資法の制定作業について(7))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.12 外国投資法の制定作業について(7))が掲載されました。

No.12 外国投資法の制定作業について(7)

今回は、パブコメ稿のうち、前回までの本欄で触れていない事項について説明します。

1. 投資促進に関する制度

パブコメ稿は第6章「投資促進」(100条から110条)において、国家が外国投資の発展戦略を制定して外国投資促進システムを構築・完全化すること等を規定します(※1)。「商務部説明」によれば、パブコメ稿の関連規定は、投資促進領域における政府機能の強化という国際的な傾向を意識しているようです。なお中国政府としては、外資導入における「質」と「レベル」の向上も目指していること(100条)(※2)、また外資導入の促進にあたっては国家安全、社会公共利益、公衆の生命・健康、生態環境及び労働者の権益等との調和も要求していること(104条)にも注意すべきです。

2. 投資保護に関する制度

パブコメ稿は第7章「投資保護」(111条から118条)において、外国投資家及びその投資を保護するための諸制度を規定します。この中には収用(中文では「徴収」)、徴用、国家賠償、出資・利潤等の移転許容、透明性の確保、知的財産権保護、商会・協会及び紛争解決に関する内容が含まれます。これらのうち収用に関しては、特殊な状況を除き国家は外国投資に対して収用を行なわないこと、国家が社会公共の利益に基づき外国投資に対して収用を実行する必要がある場合、法定の手続に従わなければならず、また、法律に基づき補償すべきものとされます(111条)。なお収用に関する同種の規定は、現行の外国投資関連特別法の中にも見られます(※3)。

3. クレーム協調処理に関する制度

パブコメ稿は第8章「クレーム協調処理」(119条から125条)において、国家が外国投資クレーム協調処理システムを構築して、外国投資家・外国投資企業と行政機関との間の投資紛争の調整及び処理を行なわせること(119条)等を規定します。これらの規定によれば、国際投資促進機構が全国外国投資クレーム協調処理センターを設立して、全国的範囲で影響の重大な外国投資クレームを調整・処理させ、また、各種の職権を行使させることになります(120条)。このほか、県レベル以上の地方各級人民政府も必要に応じて外国投資クレーム協調処理機構を設立して、管轄区域内において一定の投資クレーム調整・処理業務を行なうことが予定されています(123条)。

4. 監督検査・法律責任に関する事項

パブコメ稿は第9章「監督検査」(126条から143条)において、外国投資家及び外国投資企業の本法遵守状況に関して外国投資主管部門が行う監督検査について規定します。これらの監督検査は、定期的なサンプル検査や通報、関連部門・司法機関の意見等に基づき行なわれるものとされます(126条、127条)。
またパブコメ稿は第10章「法律責任」(144条から152条)において、外国投資家や外国投資企業が本法の規定に違反した場合の責任を規定します。例えば外国投資家が実施禁止目録(※4)に記載される領域に投資した場合、投資の停止を含む各種是正命令や違法所得の没収、罰金(10万元以上100万元以下、または違法な投資額の10%以下。)の対象となります(144条)。

【注】
※1 引用する条文番号は、特に断らない限りいずれもパブコメ稿のものです。
※2 (当該地域における雇用や税収確保という側面が特に重視された)外資導入の初期段階とは異なり、現在では、当該外国投資プロジェクトが有する技術やサービスノウハウの高度性等の要素がより重視されるようになっています。
※3 中外合資経営企業法2条3項、外資企業法5条。
※4 「実施禁止目録」については、本欄No.7「外国投資法の制定作業について(2)」中の該当部分をご参照下さい。 

(2015年4月23日 弁護士 小林幹雄