TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.14 預金保険制度の運用開始について)が掲載されました。

その他更新情報

「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.14 預金保険制度の運用開始について)が掲載されました。

No.14 預金保険制度の運用開始について

1. 中国で預金保険制度が正式に導入

本年5月1日、「預金保険条例」(以下「本条例」)が施行され、中国の預金保険制度の運用が開始しました。本条例については昨年11月30日に国務院法制弁公室よりそのパブリックコメント稿(以下「パブコメ稿」)が発表され、同年12月30日を期限として意見募集がなされていました。その後、国務院令第660号として、本年2月17日、正式に本条例が公布されたものです。

2. 「預金保険条例」の内容

本条例はパブコメ稿と同様、全23条で構成され、預金保険制度の適用主体・範囲、補償上限額、手続事項、預金保険基金の関連事項及び当事者の責任等を規定します。制度の適用対象として中国国内で設立された商業銀行や農村合作銀行等、預金受け入れを行なう銀行業金融機関を広く含む点、及び補償される金額上限を「人民幣50万元」とする点等、主要な内容についてはパブコメ稿から変更されていません(2条、5条)(※1)(上記の各内容に関しては、本欄No.2「預金保険制度の導入計画について」中の該当部分(パブコメ稿についての解説)もご参照下さい。)。

なお、補償対象の預金につき、預金保険基金管理機構から預金者への補償がなされる場合のスケジュール(本条例所定の事由の発生より7営業日以内)を明確にしたこと等(19条2項)、パブコメ稿から変更された内容も若干見られます。このほか、本年3月20日には「預金保険制度の実施方案に同意することに関する国務院の回答」(国函[2015]60号)により、預金保険基金の管理業務は中国人民銀行が担当することが明らかにされました。

3. 預金保険制度導入の意義

中国においては、これまで金融機関における預金者保護の枠組みが明確ではありませんでした(※2)。今般、預金保険制度が導入され、99.63%の預金者の全預金がカバーされる見込みとなったことは、金融セーフティネットの強化、預金者の安心に繋がります(※3)。他方、当該制度の適用対象となる、個々の金融機関が負担すべき預金保険料の割合の決定においては、当該金融機関の経営管理状況及びリスク状況等の要素が考慮されます(9条2項)。預金保険制度の導入後、これらの金融機関においては、自らの経営管理状況・リスク状況等の維持又は改善に向けた努力がこれまで以上に重要となりそうです。

【注】
※1 本稿中で引用する条文番号はいずれも本条例のものです。
※2 預金保険制度導入の必要性自体は中国においても比較的早期に認識され、これまで検討が続けられてきました。
※3 本欄No.2「預金保険制度の導入計画について」で触れた通り、上記の補償上限額は、中国人民銀行が2013年末を基準として行った計算では99.63%の預金者の全預金をカバーできるとのことです。
(2015年5月19日 弁護士 小林幹雄