TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.15 新しい外商投資産業指導目録の施行について)が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.15 新しい外商投資産業指導目録の施行について)が掲載されました。

No.15 新しい外商投資産業指導目録の施行について

1. 新しい外商投資産業指導目録の成立

近時「外商投資産業指導目録(2015年修正)」(以下「新目録」)が発布され、本年4月10日より施行されています。新目録については昨年11月4日に国家発展改革委員会がそのパブリックコメント稿(以下「パブコメ稿」)を発表し、同年12月3日を期限として意見募集を実施していました。その後、国家発展改革委員会及び商務部令第22号として、本年3月10日付で正式に新目録が発布されたものです(※1)。

2. 新目録の特徴

新目録においては「制限類」の項目、中国側当事者のマジョリティ取得が要求される項目及び中外合弁/合作形態による投資が要求される項目の数がそれぞれ旧目録と比べて減少し、全体として、規制緩和の方向性が顕著です。
(なお、本欄における「旧目録」とは、2012年1月30日に施行され、今般廃止された2011年修正版の外商投資産業指導目録を指します。)。

具体的には、
①「制限類」が旧目録では79項目であったのが、新目録では38項目に減少。製造業を中心に、多くの業種が「制限類」から外される。例えば有名・良質な白酒(蒸留酒)等の飲料製造業が「制限類」から外されて「許可類」となった。
② 中国側当事者のマジョリティ取得が要求される項目が旧目録では44項目であったのが、新目録では35項目に減少。
③ 中外合弁/合作形態による投資が要求される項目が旧目録では43項目であったのが、新目録では15項目に減少。例えば漢方薬材料の栽培や養殖において外国資本のみによる投資が新たに認められる。
等の内容となっています(※2)。

3. 自動車(完成車)製造業は「制限類」へ

新目録において注目すべき点は、自動車(完成車)の製造業が「制限類」に区分され、外国投資者のマジョリティ取得制限、設立合弁企業数の上限がそれぞれ明記されたことです。これらの制限の内容自体は現行政策(「自動車産業発展政策」第48条所定の外国投資者のマジョリティ取得制限等)の通りであり、新たな制限が導入されたわけではありません。しかしながら、旧目録では「許可類」に位置付けられていた自動車(完成車)の製造業が今後は「制限類」に位置付けられるという変化は見逃せないものと思われます。現在でも比較的多くの自動車メーカーによる生産能力拡張が続く中国の自動車市場ですが、今回の位置付けの変更が、これらメーカーの新規投資プロジェクトに対する当局姿勢にどのように影響するか、という点は留意すべき部分です(※3)。

【注】
※1 外商投資産業指導目録の制度及びパブコメ稿の概要については、本欄No.1「外商投資産業指導目録の改正作業について」をご参照下さい。
※2 なお「奨励類」に関しても、合計76項目につき修正が加えられました(奨励類から削除された項目、奨励類に追加された項目のいずれもあります。)。奨励類に追加された項目の例として、いわゆるIoT(中国語:「物聯網」)技術の開発・応用分野や高齢者福祉施設分野があります。
※3 なお、自動車(完成車)の製造業は、旧目録の前に施行されていた「外商投資産業指導目録」(2007年修正版)では、「奨励類」に位置付けられていました。これが、本文記載の通り、旧目録では「許可類」に、新目録では「制限類」に段階的に変更されたことになります。近年における位置付けの変化からは、中国の自動車市場が生産過剰の状況にあるという政府の認識が強くなりつつあることが窺われます。
(2015年5月25日 弁護士 小林幹雄