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外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)政治的理念を批判する表現行為の名誉毀損の成否判断に関する事件[大法院2018.10.30.宣告全員合議体判決])

2019.01.07

[1] 表現行為が名誉毀損に該当するか否かを判断する際に考慮すべき事項及び他人に対し批判的な意見を表明することが不法行為となる場合 / 公的な存在の政治的理念を批判する表現に対する法的規制及びその限界

[2] 甲等がツイッターの文章や記事に乙等を批判する文章を作成し掲示する際に、「従北」(北朝鮮を擁護する勢力を示す単語)や「主思派」(北朝鮮の金日成の主体思想を支持する勢力を示す主体思想派の略)等の表現で称した事案において、甲等がツイッターの文章や記事においてした上記表現行為は、意見表明や具体的な状況提示をする疑惑の提起に過ぎないため不法行為とはならず、又は乙等が公人であることを考慮すると違法ではないとした事例

[1] [多数意見の要約]
(ア) 名誉毀損と侮辱的表現は区別して扱う必要がある。表現行為による名誉毀損責任は、事実を摘示することにより名誉が毀損されたという点が認められなければならない。名誉とは客観的な社会的評判を意味し、表現行為によって客観的に評判や名声が傷つけられたという点まで証明されれば、名誉毀損責任が認められる。
一方、表現行為が名誉毀損に該当するか否かを判断する際は、使用された表現のみならず、発言者とその相手方は誰であり、いかなる地位にいるのかを考慮する必要がある。被害者の立場を考慮する際、公的人物の場合は、批判を甘受し、批判に対しては解明及び再反駁を通じて克服すべきであるという公人理論が反映される。
民主主義国家においては、多数意見を集約させて民主的政治秩序を生成し、維持させなければならないため、表現の自由、特に、公的関心事に対する表現の自由は、憲法上の権利として最大限保障されなければならない。表現の自由と同時に保障されるべき個人の私的法益とが衝突した場合には、表現の自由により得られる価値と人格権の保護により達成される価値を比較衡量して、その規制の幅及び方法を定めなければならない。
他人に対し批判的な意見を表明することは、極めて例外的な事情がない限り違法とすることはできないが、表現行為の形式及び内容が、侮辱的かつ軽蔑的な人身攻撃に該当し、又は他人の身上に関して多少の誇張を超えて事実を歪曲する公表行為をすること等により人格権を侵害した場合には、意見表明の限界を超えるものとして不法行為となりうる。

(イ) メディアが公職者等に対し批判し、又は政治的な反対意見を表明する際に、事実の摘示が一部含まれた場合であっても不法行為責任を認めることについては慎重であるべきである。大法院は、メディア報道が、公職者又は公職社会に対する監視・批判・牽制という正当なメディア活動の範囲を超えて悪意的又は極めて軽率な攻撃であり、著しく相当性を欠くと評価される場合に限り責任を認めている。
表現が公的な存在の政治的理念に関するものである場合、その公開及び検証が徹底されなければならない。なぜならば、その公的な存在が国家や社会的に与える影響力が大きいほど、その政治的理念は国家の運命までもゆるがしかねないからである。
一方、人や団体が持つ政治的理念を正確に証明することは、その性質上不可能に近い。そのため、これに対する疑惑の提起や主観的評価が真実に合致し、又は真実であると信じるに足りる相当な理由があるのかを検証する場合には、厳正な証明を要求してはならない。
したがって、政治的理念に関する論争や討論に法院が直接介入し、司法上の責任を科することは望ましいとはいえない。

(ウ) いかなる時代や社会においても不正確又は不適切な表現は存在する。だからといって、そのような表現の全部に対し重い法的責任を科すことが解決策とはいえない。一定の限度を超えた表現に対しては厳正な措置を取る必要があるが、その前提として、自由な討論と成熟した民主主義のために表現の自由が広く保障されなければならない。自由な意見表明や公開討論の過程においては、部分的に誤った表現や過度の表現は避けられないが、表現の自由が本来の機能を発揮するために、名誉毀損や侮辱的な表現を理由として法的責任を科する範囲を狭めるとしても、法的に容認できる限界を明らかに超える表現については、厳正に対処しなければならない。また、名誉毀損による責任から表現の自由を保障するためには、法的判断から自由な中立的空間を確保する必要がある。
表現の自由を保障することにより、理念が対立する者同士が相互に壁を作り誹謗する状況であっても、一般国民が、その論争を見て、誰が正しく誰がそうでないのかを判断する機会を得ることができる。政治的、理念的な論争過程において、通常生じうる修辞学的な誇張や比喩的表現に過ぎないと認められる部分までも禁忌として法的責任を負わせることは、表現の自由を過度に制限する結果を生むおそれがある。

[大法院裁判官5名による反対意見の要約]
民主主義国家において表現の自由は最大限保障されなければならないが、表現の自由にも一定の限界があるといわざるをえない。
表現の自由とその土台となる民主主義の前提は、異なる考えを持つ他者を認め、受け入れることである。考えや理念が異なる他者を認め受け入れるという前提があって初めて中立的空間が作られる。相手方の存在を否定し、討論自体を封鎖するような極端な表現については、一定の制限が必要である。

[2] 甲等がツイッターの文章や記事に乙等を批判する文章を作成し掲示する際に、「従北」や「主思派」等の表現で称した事案において、上記表現行為の意味を客観的に確定する場合、事実の摘示ではなく、意見の表明とみる余地がある点、名誉毀損に該当するには、事実の摘示があるか否かを検討し、それが真実か虚偽かにより損害の程度を判断しなければならないが、上記表現行為に事実の摘示が含まれていても、公人である乙等に対する疑惑の提起や主張が真実であると信じるに足りる相当な理由があると認める具体的な状況の提示がある点などに照らし、甲等がツイッターの文章や記事においてした上記表現行為は、意見表明や具体的な状況提示をする疑惑の提起に過ぎないため不法行為とはならず、又は乙等が公人であることを考慮すると違法ではないとした事例。

2014ダ61654全員合議体判決[損害賠償(キ)] [判例公報2018 2347]

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