TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)逸失収入の算定にあたり労働可能年限を65歳とすべきか否かに関する事件[大法院2019.2.21.宣告全員合議体判決])

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外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(民事)逸失収入の算定にあたり労働可能年限を65歳とすべきか否かに関する事件[大法院2019.2.21.宣告全員合議体判決])

[1] 一般肉体労働をする者又は肉体労働を主たる生計活動とする者の稼働年限を経験則上満65歳までとすべきか否か(原則的積極)

[2] 逸失収入算定の基礎となる被害者の稼働年限を認定する基準

[1][多数意見]
大法院は、1989年12月26日に言い渡した88ダカ16867全員合議体判決(以下「従前の全員合議体判決」という。)において、一般肉体労働をする者又は肉体労働を主たる生計活動とする者(以下「肉体労働」という。)の稼働年限を経験則上満55歳とした既存の見解を廃棄した。それ以降現在に至るまで肉体労働の稼働年限を経験則上満60歳とすべきであるとの見解を維持してきた。
しかし、わが国の社会的・経済的構造及び生活条件が急速に向上・発展し法制度が整備・改善されるのに伴い、従前の全員合議体判決当時に上記経験則の基礎となっていた諸般の事情が著しく変化したため、上記の見解をこれ以上維持することが困難となった。今後は、特段の事情がない限り、満60歳を超えて満65歳まででも稼働できると考えるのが経験則に合致する。

[大法院裁判官2名の別個意見]
60~64歳の経済活動参加率が60%程度であり、その年代以降の死亡確率が急激に増加する点、特に被害者が若いほど上記年代に至らずに死亡する確率が高いといわざるをえない点、一般的な法定定年及び年金受給開始年齢が2018年現在63歳を超えておらず、近い将来も大きく変わることはないと思われる点など諸般の事情を考慮すると、通常の場合、満63歳まで経済活動をするものと考えるのが相当であり、結局、平均余命、経済活動参加率、社会保障制度との関連性等を適切に反映した満63歳を肉体労働の適正稼働年限であるということができる。

[大法院裁判官1名の別個意見]
大法院は、経験則上稼働年限に関して包括的な法理を提示するのにとどめなければならず、特定の年齢に断定して宣言してはならない。
現在、経験則上稼働年限を満65歳又は満63歳と断定して宣言できるほどに経験的事実に関して確実な変化があるものとはいい難い。また、被害者の健康状態など個人的要素を考慮しないで稼働年限を一律的に定めることが経験則であるともいえない。それだけでなく、経験則上稼働年限を別途認定すべき経験的事実の変化があるたびに、大法院が経験的事実を調査して全員合議体判決により経験則上稼働年限を特定して宣言することが適正であるのかも疑問である。
下級審判決が異なっているため、大法院が統一的な基準を提示する必要性がある。しかし、大法院が統一的な基準を提示する方法は、多数意見のように一律的に稼働年限を満65歳と断定して宣言する方法ではなく、「肉体労働の一般的な稼働年限を満60歳以上とだけ提示して満65歳と認定した別個の事件において、事実審判決が正しいと判断する方法」で十分である。

[2] 事実審法院が逸失収入算定の基礎となる稼働年限を認定するときは、国民の平均余命、経済水準、雇用条件等の社会的・経済的条件のほか、年齢別勤労者人口数、就業率又は勤労参加率並びに職種別勤労条件及び定年制限など諸般の事情を調査し、そこから経験則上推定される稼働年限を導き出し、又は被害者の年齢、職業、経歴、健康状態など具体的な事情を考慮し、稼働年限を認定することができる。

2018ダ248909全員合議体判決[損害賠償(キ)] [判例公報2019 781]