TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.17 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(2))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.17 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(2))が掲載されました。

No.17 自然人や企業間の貸付行為等に関する司法解釈について(2)

1. 企業間貸付に関する規定

前回に引き続き、本年9月1日に施行された「民間貸借案件審理の適用法律にかかる若干問題に関する最高人民法院の規定」(法釈[2015]18号)(以下「本解釈」)のポイントを解説します。今回は、本解釈のうち企業間貸付に関する部分に注目します。本解釈第11条は「法人の間、その他組織の間、及びこれら相互の間において生産、経営の必要のために締結された民間貸借契約は、契約法第52条、本規定第14条所定の状況が存在する場合を除くほか、当事者が民間貸借契約について有効であると主張する場合、人民法院は支持しなければならない。」と規定します(※1)。

2. 企業間貸付の有効性に関するこれまでの考え方

上記の条項は一定の要件のもとに企業間貸付行為の有効性を認めるものですが、この点には大きな意義があります。企業間の貸付行為について、これまで中国では、中国人民銀行が1996年8月1日に施行した「貸金通則」等に基づき、これを無効とする考え方が一般的であったためです(※2)。なお本解釈の施行により「貸金通則」の規定の効力が当然に左右されるものではありませんので、今後の実務運用には不明確な部分も残ります。但し、本解釈は、少なくとも、今後、正当な生産・経営上の資金需要のために行われた企業間貸付行為の有効性を考える上で、重要な根拠となります。

3. 本解釈第11条所定の要件

なお、本解釈第11条に規定される通り、生産、経営上の必要のために締結された企業間貸付契約等であっても、契約法第52条、本解釈第14条所定の状況に該当する場合はその有効性が認められません。この点、契約法第52条は契約一般に適用される各種無効事由を、本解釈第14条は民間貸借契約の各種無効事由を、それぞれ規定していることから、当該企業間貸付等行為の有効性を判断するにあたっては、上記各条項の内容についても確認する必要があることになります(※3)。

【注】
※1 特に断らない限り、本稿中で引用する条文番号はいずれも本解釈のものです。
※2 例えば「貸金通則」第61条は「各級行政部門及び企業事業単位、供給販売合作社等の合作経済組織、農村合作基金会及びその他基金会は、預金・貸金等の金融業務を経営してはならない。企業の間においては、国家の規定に違反して貸借、又は形を変えた貸借融資業務を処理してはならない。」と規定しています。当該条項は、企業間貸付の有効性を否定する根拠の一つとして理解されています。
※3 契約法第52条は第1号から5号において契約の無効事由を規定します。例えば一方当事者が詐欺・強迫の手段で契約を締結して、国家の利益を損なう場合には当該契約は無効となります(当該条項第1号)。また本解釈第14条は第1号から5号において民間貸借契約の無効事由を規定します。例えば金融機関から資金を借り入れた上で借主に対する高利息での転貸がなされ、かつ、借主が当該状況を事前に知り又は知りうべき場合、当該民間貸借契約は無効となります(当該条項第1号)。
(2015年9月10日 弁護士 小林幹雄