TOPその他更新情報 「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.20 大気汚染防止法の改正について(2))が掲載されました。

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「最新!中国ビジネス法の実務動向」(No.20 大気汚染防止法の改正について(2))が掲載されました。

No.20 大気汚染防止法の改正について(2)

1. 違反行為に対する罰則の強化

今回は改正法の注目点の一つである、違反行為に対する罰則の強化について紹介します。改正法は第7章「法律責任」(第98条から第127条の合計30条で構成。)において大気汚染防止法に違反した当事者に科される罰則等、各種法律責任の内容を規定していますが、そのボリュームだけを見ても、現行法(第6章「法律責任」の項目が、第46条から第65条の合計20条で構成されています。)と比較して詳細な規定となっていることがわかります。以下、これらの内容のうち特に留意すべき内容について見て行きます。

2. 罰金額の上限規制(「人民幣50万元」)の撤廃

現行法第61条は、大気汚染防止法に違反して大気汚染事故を引き起こした企業等に対して所在地の県レベル以上の地方人民政府環境保護行政主管部門が、引き起こされた危害結果に基づき直接経済損失の50%以下の罰金に処するものとしていますが、他方でその最高額は人民幣50万元を超えないものとします。改正法は、同様の場面において当事者に科されうる罰金の額を、①一般的な又は比較的大きな大気汚染事故を引き起こした場合:汚染事故が引き起こした直接損失の1倍以上3倍以下で計算した罰金、②重大又は特大の大気汚染事故を引き起こした場合:汚染事故が引き起こした直接損失の3倍以上5倍以下で計算した罰金とした上で、現行法における上記「人民幣50万元」という罰金額の上限規制は設けていません(改正法第122条第2項)。

3. 日ごとに連続する罰金処罰制度の導入

改正法第123条は、企業等が大気汚染防止法に違反して行った一定の行為(例:汚染物質排出許可証を法律に基づき取得せずに大気汚染物質を排出する行為等。上記条項に該当行為が列挙されています。)につき罰金処罰を受け、是正を命じられても是正しない場合、法律に基づき処罰決定を行なった行政機関は是正を命じた日の翌日より原処罰の額に従って日ごとに連続して処罰することができるものとします。企業等が違法に汚染物質を排出し、罰金処罰を受け、是正命令を受けても是正しない場合において、同様に日ごとの連続処罰を行いうる制度は本年1月1日に施行された改正「環境保護法」でも導入されています(同法第59条第1項(※1))。本制度は、上述した罰金額の上限規制(「人民幣50万元」)の撤廃と同様、大気汚染防止法に違反した企業等に対する罰金処罰を強化するものです。現地に進出する企業としては、これまで以上に、大気汚染防止法を遵守した適正な工場の運営等を心がける必要があります。

4. 企業の責任者等に対する責任追及

上記のほか、改正法第122条第1項は大気汚染防止法に違反して大気汚染事故が引き起こされた場合、企業等において直接責任を負う主管人員やその他の直接責任人員に対して、県レベル以上の人民政府環境保護主管部門が科すことができる罰金(その金額は、前年度において当該企業等より得た収入の50%以下です。)についても規定します。現行法第61条も同様の事故が発生した場合で、かつ、情状が比較的重い場合に、企業等において直接責任を負う主管人員やその他の直接責任人員に対して、法律に基づく行政処分や紀律処分を行うこと等を規定していますが、改正法が上記の通り具体的な罰金制度を規定したことには注目すべきです。現地に進出する企業としては、一定の場合には企業内部の責任者等に対する責任追及がなされる可能性もあることを改めて認識することが必要です。

【注】
※1 改正「環境保護法」第59条第1項「企業事業単位及びその他の生産経営者が違法に汚染物質を排出し、罰金処罰を受け、是正命令を受けても是正しない場合、法律に基づいて処罰決定をした行政機関は是正命令を行なった日の翌日から起算して、当初の処罰金額に従い日ごとに連続して処罰することができる。」
(2015年11月11日 弁護士 小林幹雄