外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(刑事)SNS(カカオトーク)上の名誉毀損において情報通信網法等違反にあたらないとされた事件[大法院2020.5.28.宣告])
2020.08.20
【判示事項】
[1] | 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第70条第1項による犯罪が成立するための要件として、「被害者が特定された事実を明かし、名誉を毀損したこと」であるかを判断する方法 |
[2] | 被告人が小学生の娘甲に対する学校暴力を申告し、校長が加害児童である乙に対し、学校暴力対策自治委員会の議決に従い「被害児童に対する接触、報復行為の禁止」等の措置をしたところ、その後、被告人が自身のカカオトークアカウントのプロフィールのステータスメッセージに、「学校暴力犯は接触禁止!!! 」という文と拳を表す絵文字3個を掲示することによって乙の名誉を毀損したとして、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)により起訴された事案において、諸般の事情に照らし、被告人が上記ステータスメッセージを通じて乙の社会的価値や評価を低下させるのに十分な具体的な事実を明かしたとはいえないにもかかわらず、これと異なった判示をした原審判決に法理誤解等の誤りがあったとした事例 |
【判決要旨】
[1] | 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第70条第1項は、「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公に事実を明かし、他の人の名誉を毀損した者は、3年以下の懲役又は3千万ウォン以下の罰金に処する。」と定めている。この規定による犯罪が成立するためには、被害者が特定された事実を明かし、名誉を毀損しなければならない。ここで事実を明かすというのは、これをもって特定人の社会的価値や評価が侵害される可能性が存する程度に具体性を帯びた事実を明かすことを意味するが、そのような要件が満たされるために、必ずしも具体的な事実が直接的に明示されていなければならないものではないが、少なくとも特定の表現から当該事実が即座に類推されうる程度でなければならない。また、被害者が特定されたというためには、表現の内容を周囲の事情と総合して見た際に、その表現が誰を指目するのかを見抜くことができる程度でなければならない。一方、特定の表現が事実であるのか、それとも意見であるのかを区別する際には、言語の通常の意味と用法、証明可能性、問題となった言葉が使用された文脈、その表現がなされた社会的状況など全体的な情況を考慮して判断しなければならない。 |
[2] | 被告人が小学生の娘甲に対する学校暴力を申告し、校長が加害児童である乙に対し、学校暴力対策自治委員会の議決に従い「被害児童に対する接触、報復行為の禁止」等の措置をしたところ、その後、被告人が自身のカカオトークアカウントのプロフィールのステータスメッセージに、「学校暴力犯は接触禁止!!! 」という文と拳を表す絵文字3個を掲示することによって乙の名誉を毀損したとして、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)により起訴された事案において、上記ステータスメッセージには、その表現の基礎となる事実関係が明かされておらず、「学校暴力犯」という単語は「学校暴力を犯した人」を通称する表現であるが、被告人は「学校暴力犯」自体を表現の対象としたに過ぎず、特定人を「学校暴力犯」と指称しておらず、学校暴力が深刻な問題として台頭している我が社会の現実、小学生の子を持つ被告人の地位等を考慮すれば、被告人が「学校暴力犯」という単語を使用したからといって実際に発生した学校暴力事件に関して言及したものだと断定することはできず、「接触禁止」という語彙は通常、「接触しないこと」という意味で解され、上記議決等を通じて乙に上記措置が下されたという事実が乙と同じクラスの児童やその保護者らに知れ渡ったことを認める証拠もないため、被告人がステータスメッセージを通じて、乙の学校暴力事件やその事件により乙が受けた措置について記載することによって乙の社会的価値や評価を低下させるのに十分な具体的な事実を明かしたとはいえないにもかかわらず、これと異なった判示をした原審判決に法理誤解等の誤りがあったとした事例 |
2019ド12750判決[児童福祉法違反・情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)] [判例公報2020 1298]