TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(憲法訴願)即時抗告期間を定めた刑事訴訟法第405条の違憲性を訴えた事件[憲法裁判所2018.12.27.決定])

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外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(憲法訴願)即時抗告期間を定めた刑事訴訟法第405条の違憲性を訴えた事件[憲法裁判所2018.12.27.決定])

【決定文要旨】

憲法裁判所は2018年12月27日、即時抗告の提起期間を3日に制限している刑事訴訟法第405条が憲法に合致せず、同法律条項は2019年12月31日を期限として改正されるまで引き続き適用するという決定を言い渡した。[憲法不合致]
これについては、同法律条項は憲法に違反しないとする裁判官イ・ウネ、イ・ジョンソクの反対意見がある。

事件の概要
<2015憲バ77>
請求人は、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(名誉毀損)等の公訴事実により起訴されて裁判を受けた際、裁判長に対し忌避申請をしたが2014年9月19日に棄却され、金曜日である2014年9月26日にその決定文が送達された。請求人は、火曜日である2014年9月30日に忌避申請棄却決定に対し即時抗告をしたものの、刑事訴訟法第405条に規定された3日の即時抗告期間が経過し抗告権が消滅したことを理由として即時抗告が棄却されると、大法院に対し再抗告をし、再抗告審係属中に刑事訴訟法第405条について違憲法律審判提請申請をしたが棄却されたため、本件憲法訴願審判を請求した。
<2015憲マ832>
請求人は、自己が告訴した事件に対しソウル中央地方検察庁の検事により不起訴処分がなされると、ソウル高等法院に裁定申請をしたが2015年7月10日に棄却され、金曜日である2015年7月17日にその決定文が送達された。請求人は大法院に即時抗告を提起しようとしたが、決定文が送達された直後が週末で関連公的機関等が休みであり、月曜日は個人的な都合により法律相談を受けることができず、即時抗告の提起期間である3日を守ることができなくなったことから、刑事訴訟法第405条が自己の裁判請求権等を侵害していると主張し本件憲法訴願審判を請求した。

審判対象
本件審判対象は、刑事訴訟法(1954年9月23日法律第341号により改正されたもの)第405条(以下「審判対象条項」という)が憲法に違反するか否かである。

[審判対象条項]
刑事訴訟法(1954年9月23日法律第341号により改正されたもの)
第405条(即時抗告の提起期間)即時抗告の提起期間は、3日とする。

決定主文
刑事訴訟法(1954年9月23日法律第341号により改正されたもの)第405条は憲法に合致しない。同法律条文は2019年12月31日を期限として立法者により改正されるまで引き続き適用する。

理由の要旨
・即時抗告は、当事者の重大な利益に係る事項や訴訟手続を円滑に進める上で迅速な結論が必要な事項を対象としており、限定された事項に対し簡易かつ迅速な判断をするための手続であることから、その提起期間を短く定める必要性が認められる。一方で、即時抗告の対象となる刑事裁判には、正式裁判請求の棄却決定、上訴権回復請求の許否決定、執行猶予取消決定、宣告猶予した刑を言い渡す決定、控訴棄却決定等のように、当事者の法的地位に重大な影響を及ぼすものが多いため、抗告権者の裁判請求権保障の側面において抗告のための熟慮及び準備のための実効的な不服期間の保障が要請される。
・審判対象条項は1954年に制定されて以来、一度も改正されることなく即時抗告の提起期間を3日に制限している。しかし、刑事裁判中の決定手続においては、その決定日が予め当事者に告知されるものではないため、即時抗告手続の準備を行うにあたり相当な期間を付与する必要があり、今日の刑事事件は、その内容がより複雑になり、即時抗告の可否決定においても以前より多くの時間を要する点、勤労基準法の改正により週40時間勤務が拡大、定着し、週末に公的機関や弁護士に法的助言を求めることが容易でなく、郵便を利用するにしても書類の提出に関する到達主義の原則と発送や到達に時間を要する点、特急郵便も一般的に発送した翌日に郵便が到達する点などに鑑みると、審判対象条項は変わりゆく社会の現実を正確に反映できておらず、当事者が少しでも遅滞した場合に即時抗告権自体を行使できなくさせることは不当な結果を招く。
・刑事裁判手続の当事者が拘束されていなくても、法院に即時抗告状を提出することが困難な状況が発生する可能性はあり、刑事訴訟法第344条の再訴者特則規定は、個別に準用規定がある場合にのみ適用されるのみならず、刑事訴訟法上の法定期間延長条項や上訴権回復請求に関する条項のみでは、3日という極めて短い即時抗告の提起期間の徒過を補完するには不十分である。
・3日という即時抗告の提起期間は、民事訴訟、民事執行、行政訴訟、刑事補償手続等の即時抗告期間である一週間や、米国、ドイツ、フランス等の即時抗告期間と比較しても極めて短い。刑事裁判の特殊性を考慮すると、迅速に法律関係を確定する必要性が認められる一方、刑事裁判に対する当事者の不服権を実質的に保障し防御権行使に支障がないようにすることも重要であるため、刑事裁判という理由のみで民事訴訟等の半分にも満たない即時抗告の提起期間を設けることが刑事手続の特殊性を正確に反映しているとはいえない。即時抗告自体が刑事訴訟法上明文の規定がある場合にのみ認められるため、期間延長による弊害が大きいともいえない。
・したがって、審判対象条項は、即時抗告の提起期間を極めて短く定めることによって実質的に即時抗告の提起を困難にし、即時抗告制度を専ら形式的かつ理論的な権利としてのみ機能させているため、立法裁量の限界を逸脱して裁判請求権を侵害する。
・従前の審判対象条項に対する合憲先例(憲裁2011年5月26日2010憲マ499; 憲裁2012年10月25日2011憲マ789)は、この決定趣旨に抵触する範囲内において変更する。

憲法不合致決定
審判対象条項の違憲性は、即時抗告の提起期間である3日が極めて短く裁判請求権を侵害するという点にあるが、万一、同条項を単純違憲とした場合、即時抗告の期間制限がなくなることによって混乱が生じるおそれがあり、即時抗告提起の適正な期間に関しては立法者が十分な議論を経て決定すべき事項に属する。
したがって、審判対象条項に対し憲法不合致決定を言い渡すものの、立法者により改善案の立法化がなされるまで暫定適用を命ずる。立法者は遅くとも2019年12月31日までに改善案を立法化しなければならず、それまでに改善案の立法化がなされない場合、審判対象条項は2020年1月1日からその効力を失うものとする。

裁判官イ・ウネ、イ・ジョンソクの反対意見
多数意見で挙げられている先例変更の事情は先例決定以降に発生した事情とはいい難く、又は審判対象条項が裁判請求権を侵害しているという判断を変更するのに値する事情変更に該当するとはいえない。したがって、審判対象条項は立法裁量の限界を逸脱しておらず、裁判請求権を侵害しないとする先例の立場を維持すべきである。

決定の意義
・審判対象条項に対しては、憲法裁判所において二度にわたり合憲決定をしているが(憲裁 2011年5月26日2010憲マ499; 憲裁2012年10月25日2011憲マ789)、本件において先例を変更し憲法不合致決定を言い渡した。
・裁判を請求できる期間を定めることは、原則として立法者がその立法裁量に基づく政策的判断に従い決定する問題であるが、本件の場合、即時抗告の提起期間を3日に制限したことが裁判請求権に関する立法裁量の限界を超えて憲法上保障された裁判請求権を無意味にしかねない程度に及んだと評価した。
・もっとも、審判対象条項が違憲であるとする理由は、即時抗告の提起期間を極めて短く定めて裁判請求権を侵害しているためであるが、期間制限自体をなくした場合、混乱を招き、適正な期間をどの程度に定めるかは立法者が十分な議論を経て決定する事案であるから、単純違憲ではなく憲法不合致決定を言い渡すものの、改善案の立法期間を設けてそれまでに暫定適用を命じた事案である。

2015憲バ77、2015憲マ832(併合)[刑事訴訟法第405条違憲訴願] [憲法裁判所判例]