TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:((民事)団体協約に規定された産災遺族特別採用条項の有効性が認められた事件[大法院2020.8.27.宣告全員合議体判決])

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外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:((民事)団体協約に規定された産災遺族特別採用条項の有効性が認められた事件[大法院2020.8.27.宣告全員合議体判決])

[1] 民法第103条により団体協約が無効であるか否かを判断する際に考慮すべき事情/業務上災害による死亡等一定の事由が発生した場合、組合員の直系家族等を採用する内容の団体協約が善良な風俗その他社会秩序に反するか否かを判断する基準

[2] 甲株式会社等が労働組合と締結した各団体協約において業務上災害により組合員が死亡した場合に直系家族等1人を特別採用する旨規定した、いわゆる「産災(日本の「労災」に相当)遺族特別採用条項」が民法第103条により無効であるか否かが問題となった事案において、産災遺族特別採用条項が甲会社等の採用の自由を過度に制限する程度に至り、又は採用機会の公正性を著しく害する結果を招いたとみる特段の事情は認められないため、善良な風俗その他社会秩序に違反して無効であるとはいえないとした事例

[1] [多数意見]
団体協約は民法第103条の適用対象から除外されないため、団体協約の内容が善良な風俗その他社会秩序に違背するならば、その法律的効力は排除されなければならない。但し、団体協約が善良な風俗その他社会秩序に違背するか否かを判断する際には、団体協約が、憲法が直接保障する基本権である団体交渉権の行使によるものであり、憲法が制度的に保障する労使の協約自治の結果物であるという点並びに労働組合及び労働関係調整法により履行が特別に強制される点等を考慮し、法院の後見的介入に一層慎重になる必要がある。
憲法第15条が定める職業選択の自由、憲法第23条第1項が定める財産権等に基づき、使用者は、いかなる勤労者をいかなる基準と方法により採用するのかを自由に決定する自由を有する。但し、使用者は自らこのような自由を制限することができるため、労働組合との間で勤労者採用に関して任意に団体交渉を行った上で団体協約を締結することができ、その内容が強行法規や善良な風俗その他社会秩序に違背しない以上団体協約としての効力が認められる。
使用者が労働組合との団体交渉により、業務上災害による死亡等一定の事由が発生した場合に組合員の直系家族等を採用する内容の団体協約を締結したならば、そのような団体協約が使用者の採用の自由を過度に制限する程度に至り、又は採用機会の公正性を著しく害する結果を招く等の特段の事情がない限り善良な風俗その他社会秩序に反すると断定することはできない。このような団体協約が使用者の採用の自由を過度に制限する程度に至り、又は採用機会の公正性を著しく害する結果を招くか否かは、団体協約を締結した理由や経緯、そのような団体協約を通じて達成しようとする目的と手段の適合性、採用対象者が備えるべき要件の有無と内容、事業場内における同種の就業規則の有無、団体協約の保持期間と遵守状況、団体協約が規定する採用の形態と団体協約に従い採用される勤労者の数等を通じて知りうる使用者の一般採用に及ぼす影響及び求職希望者に及ぼす不利益の程度など様々な事情を総合して判断しなければならない。

[反対意見]
労使が業務上災害により死亡した勤労者の家族を保護するための対策を備えておくことは勧奨される事項ではあるが、そのような対策は実質的に公平であり法秩序に見合うものでなければならない。そのような対策が遺族と同じような立場で切実に職場を求める求職希望者を犠牲にし、又は死亡勤労者のうち一部の遺族のみを保護し他の遺族は保護から除外される方式であってはならない。
特別な目的を達成するために、企業の必要性や業務能力とは無関係の採用基準を採択することに労使が合意し、そのような基準が企業の規模と勤労者数、当該企業の一般的な採用方式、特別な目的達成のための採用基準の適合性、関連法令の規定、採用機会の公正に対する社会的認識等に照らすと、当該企業に対する求職希望者や他の組合員を合理的理由なく差別するものであるため、公正な採用に関する正義観念と法秩序を脱した場合には、民法第103条が定める社会秩序に違反する法律行為と評価しうる。

[2]甲株式会社等が労働組合と締結した各団体協約において業務上災害により組合員が死亡した場合に直系家族等1人を特別採用する旨定めた、いわゆる「産災遺族特別採用条項」が民法第103条により無効であるか否かが問題となった事案において、①業務上災害に対しいかなる内容や水準の補償を行うかの問題は、それ自体重要な勤労条件に該当し、甲会社等と労働組合は利害関係により産災遺族特別採用条項が含まれる団体協約を締結したと考えられる点、②産災遺族特別採用条項は社会的弱者に配慮し実質的公正を達成するのに寄与すると評価することができ、補償と保護という目的を達成するために有効適切な手段であるといえる点、③甲会社等が産災遺族特別採用条項に合意したのは採用の自由を積極的に行使した結果であるが、法院がこれを無効であると宣言すれば、甲会社等の採用の自由を不当に制限する結果となりうる点、④甲会社等の事業場では、労使が長期間産災遺族特別採用条項の有効性はもとより、その効用性についても意見を同じくし、これを履行してきたと考えられるため、採用の自由が過度に制限されると評価することが一層困難である点、⑤産災遺族特別採用条項により甲会社等が他の勤労者を採用する自由が大きく制限されると断定することが難しく、求職希望者の現実的な不利益が大きいともいえない点、⑥協約自治の観点からも産災遺族特別採用条項を有効とすべきことは明らかである点を総合すると、産災遺族特別採用条項が甲会社等の採用の自由を過度に制限する程度に至り、又は採用機会の公正性を著しく害する結果を招いたとする特段の事情は認められないため、善良な風俗その他社会秩序に違反し無効であるとはいえないにもかかわらず、これと異なった判示をした原審判断に法理誤解の誤りがあったとした事例。

2016ダ248998全員合議体判決[損害賠償等] [判例公報2020 1835]