TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(刑事)名義受託者が任意に不動産を処分しても横領罪は成立しないとした名義信託に関する判例変更[大法院2021.02.18.宣告全員合議体判決])

その他更新情報

外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(刑事)名義受託者が任意に不動産を処分しても横領罪は成立しないとした名義信託に関する判例変更[大法院2021.02.18.宣告全員合議体判決])

【判示事項】

[1] 横領罪でいう「保管」の意味/横領罪成立に必要な法律上又は事実上の委託関係は横領罪により保護に値する信任によるものに限定されるか否か(積極)及び委託関係があるか判断する基準
[2] 不動産実権利者名義登記に関する法律に違反し、名義信託者がその所有する不動産の登記名義を名義受託者に移転する、いわゆる両者間名義信託の場合、名義受託者が名義信託者に対する関係において「他人の財物を保管する者」の地位にあるか否か(消極)及びこのとき名義受託者が信託を受けた不動産を任意に処分した場合、名義信託者に対する関係において横領罪が成立するか否か(消極)/このような法理は、不動産名義信託が同法施行前に行われ、同法で定める猶予期間内に実名登記を行わないことにより、その名義信託約定及びこれに従い行われた登記による物権変動が無効となった後に処分行為がなされた場合にも同様に適用されるか否か(積極)

【判決要旨】

[1] 刑法第355条第1項が定める横領罪において保管とは委託関係により財物を占有することを意味するため、横領罪が成立するためには財物の保管者と財物の所有者(又はその他の本権者)間に法律上又は事実上の委託関係が存在しなければならない。このような委託関係は使用貸借・賃貸借・委任等の契約によってのみならず、事務管理・慣習・条理・信義則等によっても成立しうるが、横領罪の本質が信任関係に基づき委託された他人の物を違法に領得することにある点に照らすと、委託関係は横領罪で保護に値する信任によるものに限定するのが妥当である。委託関係があるか否かは財物の保管者と所有者間の関係、財物を保管することになった経緯等に照らした際に、保管者に財物の保管状態をそのまま維持すべき義務を課し、その保管状態を刑事法的に保護する必要があるか等を考慮して規範的に判断しなければならない。
[2] 不動産実権利者名義登記に関する法律(以下「不動産実名法」という)は、不動産に関する所有権その他物権を実体的権利関係と一致するよう実権利者名義で登記させることにより、不動産登記制度を悪用した投機・脱税・脱法行為等反社会的行為を防止して不動産取引の正常化と不動産価格の安定を図り、国民経済の健全な発展に資することを目的としている(第1条)。不動産実名法によれば、何人も不動産に関する物権を名義信託約定に従い名義受託者の名義で登記してはならず(第3条第1項)、名義信託約定とそれによる登記によりなされた不動産に関する物権変動は無効となり(第4条第1項、第2項本文)、名義信託約定による名義受託者名義の登記を禁止する旨規定した不動産実名法第3条第1項に違反した場合、名義信託者と名義受託者双方は刑事処罰される(第7条)。
このような不動産実名法の名義信託関係に対する規律内容及び態度等に照らすと、不動産実名法に違反し、名義信託者がその所有する不動産の登記名義を名義受託者に移転する、いわゆる両者間名義信託の場合、契約の名義信託約定とそれに付随する委任約定、名義信託約定を前提とした名義信託不動産及びその処分代金返還約定はいずれも無効である。
さらに、名義信託者と名義受託者間で無効の名義信託約定等に基づき存在すると主張されうる事実上の委託関係というのは、不動産実名法に反して犯罪を構成する不法な関係に過ぎないのであって、これを刑法上保護に値する信任によるものといえない。
名義受託者が名義信託者に対し所有権移転登記抹消義務を負うことになるが、上記所有権移転登記は最初から原因無効であるため、名義受託者は名義信託者が所有権に基づく妨害排除請求により抹消を求めることに対し相手方として応じる立場にあるに過ぎない。名義受託者が第三者とした処分行為が不動産実名法第4条第3項に従い有効となる可能性があるとしても、これは取引相手方である第三者を保護するために名義信託約定の無効に対する例外を設定した趣旨であるに過ぎず、名義信託者と名義受託者間に上記処分行為を有効にする何らかの委託関係が存在することを前提としたものとはいえない。したがって、抹消登記義務の存在や名義受託者による有効な処分可能性をもって名義受託者が名義信託者に対する関係において「他人の財物を保管する者」の地位にあるともいえない。
そのため、不動産実名法に違反した両者間名義信託の場合、名義受託者が信託を受けた不動産を任意に処分しても名義信託者に対する関係において横領罪が成立しない。
このような法理は、不動産名義信託が不動産実名法施行前に行われ、同法が定める猶予期間内に実名登記を行わないことにより、その名義信託約定及びこれにより行われた登記による物権変動が無効となった後に処分行為がなされた場合にも同様に適用される。

2016ド18761全員合議体判決[詐欺・横領] [判例公報2021 668]