TOPその他更新情報 外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(刑事)自身のアカウントに誤送金された他人のビットコインを使用しても背任罪にあたらないとされた事件[大法院2021.12.16.宣告])

その他更新情報

外国判例の日本語訳を追加致しました。(韓国:(刑事)自身のアカウントに誤送金された他人のビットコインを使用しても背任罪にあたらないとされた事件[大法院2021.12.16.宣告])

【判示事項】

[1] 仮想資産権利者の錯誤や仮想資産運営システムのエラー等により法律上原因関係なく他人の仮想資産電子ウォレットに仮想資産が振り込まれた場合、仮想資産の振込みを受けた人が信任関係に基づいて仮想資産を保存し、または管理する地位にあるか否か(消極)/仮想資産が「財産上利益」に該当するか否か(積極)及び仮想資産に対し刑法を適用し、法定貨幣と同様に保護すべきか否か(消極)/原因不明で財産上利益である仮想資産の振込みを受けた者が仮想資産を使用・処分した場合、信義則を根拠に背任罪で処罰することができるか否か(消極)
[2] 被告人が知りえない経緯で甲の特定取引所の仮想ウォレットに入っていたビットコインを自身のアカウントに振込みを受けた後、これを自身の他のアカウントに振り込んで財産上利益を取得し、甲に損害を加えたとして、特定経済犯罪加重処罰等に関する法律違反(背任)の予備的公訴事実により起訴された事案において、ビットコインが法律上原因関係なく甲から被告人名義の電子ウォレットに振り込まれても、被告人が信任関係に基づいて甲の事務を引き受けて処理するものと認められない以上、甲に対する関係において「他人の事務を処理する者」に該当しないとした事例

【判決要旨】

[1] 仮想資産権利者の錯誤や仮想資産運営システムのエラー等により法律上原因関係なく他人の仮想資産電子ウォレットに仮想資産が振り込まれた場合、仮想資産の振込みを受けた者は、仮想資産の権利者等に対する不当利得返還義務を負うことになりうる。しかし、これは当事者間の民事上債務に過ぎず、このような事情のみで仮想資産の振込みを受けた人が信任関係に基づいて仮想資産を保存し、または管理する地位にあるとはいえない。
仮想資産は、国家によって統制を受けず、ブロックチェーンなど暗号化された分散元帳によって付与された経済的な価値がデジタルで表象された情報であって財産上利益に該当する。仮想資産は、保管されていた電子ウォレットのアドレスのみを確認することができるだけで、そのアドレスを使用する人の人的事項を知ることはできず、取引内訳が分散記録されているため、他の口座に送る際、当事者以外の他の人が参加しなければならないなど一般的な資産とは区別される特徴がある。このような仮想資産については、現在まで関連法律に従い法定貨幣に準ずる規制が行われていないなど法定貨幣と同様に取り扱われておらず、その取引にリスクが伴うため、刑法を適用して法定貨幣と同様に保護すべきものではない。
原因不明で財産上利益である仮想資産の振込みを受けた者が仮想資産を使用・処分した場合、これを刑事処罰する明文の規定がない現在の状況において、錯誤送金時に横領罪成立を肯定した判例を類推して信義則を根拠に被告人を背任罪で処罰することは罪刑法定主義に反する。
[2] 被告人が知りえない経緯で甲の特定取引所の仮想ウォレットに入っていたビットコインを自身のアカウントに振込みを受けた後、これを自身の他のアカウントに振り込んで財産上利益を取得し、甲に損害を加えたとして、特定経済犯罪加重処罰等に関する法律違反(背任)の予備的公訴事実により起訴された事案において、ビットコインが法律上原因関係なく甲から被告人名義の電子ウォレットに振り込まれても、被告人が信任関係に基づいて甲の事務を引き受けて処理するものと認められない以上、甲に対する関係において「他人の事務を処理する者」に該当しないという理由で、これと異なった判示をし、公訴事実を有罪と認めた原審判断に背任罪における「他人の事務を処理する者」に関する法理誤解の誤りがあったとした事例。

2020ド9789判決[特定経済犯罪加重処罰等に関する法律違反(横領)[認定された罪名:特定経済犯罪加重処罰等に関する法律違反(背任)]] [判例公報2022 223]